カナダの山火事が続いている。アメリカにまで、その煙が広がり広い範囲で健康被害で可能性もある。マンハッタンが霧に沈んでいるような火災の煙の写真が何度もメディアに現れる。だから、カナダの山火事という言葉を聞くと、心が重くなる。その規模は例年の10倍以上に達し、2000万エーカー以上の土地が焼き尽くされているという。カナダだけでなく、広い範囲の都市にも影響を及ぼし、大気汚染が深刻化している。しかも、悪いことに火災はまだ収束の見通しが立っておらず、火災シーズンは数カ月続くと予想されている。
BBCのニュースによれば、専門家は、地球温暖化による異常気象が山火事の主な原因であると指摘している。高温と異常な乾燥が組み合わさることで、火災が起きやすい環境が生まれたのだ。また、気候変動により、火災が起きやすい季節が長くなり、火災の規模も大きくなっていることが近年の傾向だ。
山火事による濃い煙は、呼吸器系や循環器系の疾患を持つ人々、高齢者、妊娠中の女性など、特にリスクの高い人々に深刻な健康被害をもたらしている。煙による大気汚染は、多くの人に頭痛や呼吸困難などの症状が引き起こし、そこに夏の暑さが加わって、とても働くどころか生活もできない状況のようだ。
山火事により、カナダを中心に、様々な業種の操業を狂わせ、木材の収穫量を減らし、観光産業を低迷させている。さらに、大気汚染による健康被害で、長期に渡って医療制度に計り知れないコストを課す可能性がある。この結果的、インフレで経済に影響が出ている状況を悪化させ、経済成長や雇用にも影響が出ることが予想されている。コンサルティング会社のオックスフォード・エコノミクスは、今回の火災がカナダの経済成長を0.3~0.6%ポイント押し下げる可能性があると予測している。
カナダ気候研究所の主席エコノミストによれば、気候関連のコストは2025年には250億カナダドルに達し、経済成長を半減させると計算した。そして、今世紀半ばまでには、50万人の雇用が失われると予測している。そのほとんどは、労働生産性を低下させ、早死を引き起こす過度の暑さによるものだ。
このような大規模な山火事は、カナダだけでなく、世界各地でも増加している。オーストラリアの2020年の森林火災も、その例で、この火災は広範囲にわたり、多くの生命と財産が失われた。また、カルフォルニアを中心にアメリカ西部でも毎年大規模な山火事が発生している。これらの火災も気候変動の結果的だ。幸いなことに雨の多い日本では、このような大規模な山火事はまだ起こっていない。
山火事の対策としては、短期的な対策はないようだ。化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーの使用を増やすなどの努力で気候変動を抑制するしかないという。だが、それでは、今年や来年の山火事の対策にはならない。できることは、森林管理の改善で、伐採と再植林が火災のリスクを減らすそうだが、これもカナダやオーストラリアのような広い国土に対応するのは簡単ではなさそうだ。やはり、地道に温暖化ガス抑制などの環境対策を進める以外に方法はないのかもしれない。