Metaが、ヨーロッパでFacebookとInstagramの広告なしのサブスクを11月より開始する。料金はウェブとモバイルで違っており、ウェブ版で9.99ユーロ、iOSとAndroidのモバイルでは、12.99ユーロだそうだ。しばらく前まではソーシャルメディアを有料で使うと言うようなことを考えなかったが、今はほとんどのプラットフォームが有料版の提供をしている。
ただし、今回のMetaの場合には、広告モデルにサブスクモデルを加えると言う単純な話ではなさそうだ。今年の1月にEUは、Metaに対して、Facebookのユーザにパーソナライズされた広告を受け入れることを利用条件に盛り込んで、強制的に受け入れさせるようにしたとして3億9000万ユーロの罰金を課した。さらに、7月にEUの最高裁判所にあたる欧州司法裁判所は、Metaに対してMetaが収集した個人情報を外部の個人情報と結合することを禁止した。
確かにFacebookでは広告を購入する際にこちらが収集したeメールアドレスを提示することにより、そのeメールアドレスで登録されているFacebookのアカウントに広告を表示することが可能であった。これは、非常に有効な広告となるケースもある。このような広告の取引がヨーロッパでは禁止されたということだ。
この判決の中でヨーロッパでサブスクを開始することが判決に従うことにつながることが示唆されているとMetaは公表している。あまり意味がよくわからないが、想像するに、サブスクで広告なしプランを開始することにより、個人情報を使った広告が示されないと言うオプションを提供することができるので、ユーザに強制していないと言うことになるのだと推測する。つまり個人情報を使った広告が表示されないと言うオプションが用意されていればいいだけということだろう。だから、Metaが収益の多様化を図って、サブスクモデルを導入したということでは無いのだろう。
他のプラットフォームでは、すでにサブスクモデルが提供されている。YouTube、X 、Snapchatは開始しているし、TikTokも今後サブスクモデルを導入する可能性があると報道されている。
最初に有料プランを導入したのは、YouTubeだ。YouTubeのサブスクモデルのYouTubeプレミアムは、月額1180円でiOSアプリから入会した場合には、月額1550円。これはApple税と言われるApp Storeの手数料が追加でかかると言うことだろう。
YouTubeプレミアムは2014年にYouTube Music Keyとしてサービスが開始され、その後YouTube Redを経て2018年6月に現在のYouTubeプレミアムと言う名称になっている。YouTube Musicのサービスも2015年に始まり、このサービスの利用者はYouTubeプレミアムサービスも利用できる。YouTubeは、2022年9月にYouTube MusicとYouTubeプレミアムの利用者の合計が8,000万人を超えたと発表している
Xはイーロン・マスクの買収後の2022年12月に、当時はTwitter Blueとしてサブスクをスタートした。その後Twitterからのブランド名変更により、このサブスクサービスもXプレミアムと言う名称に変わっている。現在の料金は、ウェブで980円、iOSとAndroidは同額で1380円だ。
さらに複雑なことにXはこのプレミアムにの上下に2つの新しい料金プランのプレミアムプラスとベーシックの提供を開始している。料金はプレミアムプラスが、月額1960円・年額2万560円、ベーシックが月額368円・年額3916円となっている。
このうち1番高いプレミアムプラスに加入すると、オススメやフォローに広告が表示されなくなる。ポストを編集したり、長いポストができる機能が付いているのはどれでも同じだ。収益化ができるのはプレミアムとプレミアムプラスのみ。Xは3種類ものサブスクのプランを提供して、こちらは確実にサブスクのビジネスモデルを舵を切っていると考えられる。
ヨーロッパの規制を逃れるためのオプションとしてサブスクモデルを追加するMetaは別にして、サブスクモデルを開始することによりどの程度収益に貢献があるのだろうか。YouTubeの広告が気にならない人もいれば気になる人もいる。YouTubeの場合には25億人のユーザがおり、そのうちの8,000万人がサブスクに加入していると言うことになる。約3%ということだ。ただし25億人のなかのヘビーユーザーはかなり少ないだろうから、ヘビーユーザーだけに限って言えば、この比率はさらに高くなる。Xは広告収入の減少のためにサブスクモデルを追加して、ビジネスモデルを自体を変えようとしているように見えるが、それは成功するのだろうか。