2034年のサウジアラビアでのFIFAワールドカップが決定した。しばらく前から、FIFAが、その方向で動いていると推測されていたが、思ったより早く実現した。直接的には、オーストラリアサッカー協会が立候補しないことを発表したからだ。この結果、立候補申請期限までに申請を行ったのはサウジアラビアだけとなり、FIFAはこの唯一の立候補を承認した
FIFAは、2030年大会を、ヨーロッパと南アメリカの2大陸連盟内の6カ国で開催することを決めた。これで、過去8年以内に大会を開催した大陸連盟の域内の国ではワールドカップを開催できないことが決まっているため、自動的にアジアサッカー連盟(AFC)の域内で開催することが決まっていた。これが、サウジアラビアでの開催に道を拓いた。
サウジアラビアとオーストラリアが立候補して、調査を経て投票が行なわれることが予想されていたが、オーストラリアが早々に撤退したということだ。直接的には、AFCが臨時会議を開いて、オーストラリアとサウジアラビアについて議論をしたことのようだ。その席上でインドネシア、日本、ウズベキスタン、インドはサウジアラビア開催を支持したと報道されている。それは多分FIFAがサウジアラビアでの開催に動いていることや、現在のサッカーにおける力関係を反映しているのだろう。オーストラリアもそれを理解しているために、撤退を決めたのだろう。
オーストラリアサッカー協会は2034年から撤退したが、2026年の女子アジアカップと2029年クラブワールドカップについては、引き続き招致を続けると言う。
サウジアラビアはサッカーに限らず、様々なスポーツに投資を行い、存在感を増している。ロナウドやネイマールなどを自国のプロリーグで獲得して、プロリーグの育成に巨額の資金を投入している。これは、政府が行うことなで通常のビジネスのレベルを超えている。採算無視ということだ。
スポーツに投じるその資金はFIFAにとっても魅力的で、他の大会であれば、施設の使用料、収益の分配、様々なスタジアム所有者や自治体・政府との交渉など多くの問題がある。しかしサウジアラビアで開催すれば、多くのことは、サウジアラビア政府が解決してくれるので、FIFAにとっては手間もかからずより大きな収益が得られる事は確実だ。これがFIFAにとってカタールに続いてサウジアラビアでFIFAワールドカップを開催するメリットとなる。
サウジアラビアはエネルギー資源に頼った経済からより長期的な発展を施行している。その中の1つがスポーツプロジェクトだ。サウジアラビアのスポーツプロジェクトとして、政府系ファンドのPIFがプレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドの買収をしているし、LI Vゴルフの創設やF1レースの主催など様々な取り組みを行っている。また観光開発にも熱心で、一時はリオネル・メッシを観光大使として契約をしていた。ロナウドやネイマールにもそのような役割が期待されているのだろう。
巨大なスポーツイベントには、巨大な費用がかかるのは、当然のことで、その費用をかつては放送権やスポンサーシップに頼ってきたが、より高い収益を目指すためには、それだけでは足らず、カタールやサウジアラビアのような政府を頼りにしていると言うことなのだろう。
ワールドカップ開催国決定の投票は、2010年に決定した2022年カタール大会の投票を最後に、2030年も2030年も投票が行われず決定した。2022年カタール大会の投票の投票を巡って買収があったとされ、FIFA会長のブラッターと副会長のプラティニが逮捕されている(後に無罪確定)。かつて日本が行ったような招致レースは、今後なくなり、FIFAが最適な国を選んでいく形に変わっていくのだろうか。
サウジアラビアでのFIFAワールドカップの開催については、様々な反対の声がある。その代表的なものはサウジアラビアの人権問題だ。サウジアラビアでは女性は男性に従属するものとして制度が定められているし、同性関係も含んで婚姻外の性行為は、死刑の可能性がある。カタールも同様だったが人権が守られない国での開催については、今後も多くの反対の意見が出てくるんであろう。とは言うものの、既に決まってしまっているために、2034年にワールドカップはサウジアラビアで開催される。さらにカタール大会と同様に、通常の夏の期間ではなく秋に開催されるのであろう