X(元Twitter)企業価値55%減少

by Shogo

業績の低迷で、会社の未来が見えない元TwitterのXは、従業員に対して給与の一部として与えられている譲渡制限付き株式(ストックオプション)の文章を配布したそうだ。その文書によれば従業員は1株当たり45ドルが保証されており、イーロン・マスク以前の旧経営者により与えられている株式については、買収金額時の株式評価額の54.20ドルの現金が払われると言う。

この文章の中で、現時点のX社の価値は190億ドルと説明されていると言う。これは1年前にイーロン・マスクが買収に要した440億ドルに比べ55%の減少となる。これほど企業価値が減少しているにもかかわらず、買収時の1株評価額54.20ドルが、以前から株式を持つ従業員に保障されているのは、契約があるから、当然なのだろう。しかし、新たなストックオプションが45ドルと言うのは高すぎるであろう。企業価値が55%減少しているのであれば、買収時の54.20ドルから55%減少した24ドル以下でなければ意味がない。

イーロン・マスクの買収以降、様々なことが起こっている。TwitterからXへのブランド変更や従業員7500人の80%が解雇又は退職で減少したこと、1番大きいのは、以前は追放されていたトランプ元大統領や問題の発言を繰り返した人物のアカウントが復活したことだ。さらにコンテンツの内容を監査し、場合によっては削除する仕組みを廃止したことにより、問題のある発言が激増していることだ。この結果、買収以前に比べ、広告収入は60%近くも減少したようだ。

イーロン・マスクはTwitterを440億ドルで買収したが、全額を自分で出しているわけではない。そのうち130億ドルは、現在のX社の借り入れとして、付け替えられている。これは相手先資産による買収として一般的に行われている方法だが、大きな問題を抱えているのにもかかわらず、130億ドルの負債を抱えることになって、現在のX社の経営状況を、さらに悪化させているのであろう

Twitterはいくつかの特徴を持つソーシャルメディアとしてユーザを増やしてきた。しかしながら、その短文によるツイートと言う形式のために広告を販売することが難しいという欠点もあった。だから、収入の90%が広告であるにもかかわらず、十分な広告主を獲得できなかったために創業以来10年間のうち8年間は赤字と言う結果に終わっていた。

それでも、様々なソーシャルメディアの中でTwitterが多くのユーザを集めたことにはいくつかの理由があった。大きくは、以下の6点に整理できる。

  • リアルタイム
  • マイクロブログ形式
  • オープンな会話
  • ハッシュタグとトレンド
  • コミュニティ構築
  • インフルエンサーとの交流

リアルタイム性が最もTwitterの特長として重要で、速報ニュース、または緊急事態の際に重要となるリアルタイムの情報にアクセスできるプラットフォームは他にない。また、モバイルデバイスがメディア接触の中心になった現状と相互依存している。

Tweetという140文字の短文による情報発信のため、簡潔に情報共有ができ、読み取りも早いのでスピードが求められるメディアとしての機能が多くの人に受け入れられた。

Twitterはオープンな情報交換の場所が提供された。有名人から公的な役職を持つ人まで多くの人が会話に参加でき、活発な議論が可能になった。

ハッシュタグを導入して話題を簡単に発見できるようにし、トレンド目に見える形にした。これにより、その時点の話題を素早く知ることができた反面、炎上も頻発した。

同様の興味を持つ多くのユーザとつながりコミュニティーができた。これは、他のSNSと同様だが、Twitterの場合は純粋にネット上のコミュニティという点が特徴だ。

そして、Twitterは開かれた場であるためにインフルエンサーや公的な立場を持つ人との対話が可能であった。これが、Twitterを魅力的な場にしてきた。

このような様々な利点があり、その結果2億を超えるユーザが利用をしすることとなり、大きな影響力を持っていた。ユーザ数に関してはイーロン・マスクの買収後に過去最高となり、2023年には5億4000万人を超えるアクティブユーザ数を記録したと発表されている。これの理由は不明だ。本当かな。ほとんどボットという可能性もある。

このように様々な利点が多くのユーザに支持されているXが経営に苦しむのは、単純に広告が集まらないからだ。それはこの短文による投稿と言うプラットフォームの宿命で、買収以前も買収以後も変わらない。そのように広告を販売することがが難しい状況にもかかわらず、さらに問題のあるアカウントを復活させたり、コンテンツの内容確認せずに、有害な情報が野放しになっていることが、広告の販売をさらに悪化させた。ネット広告のビジネスに経験のある人物をCEOに据えたが状況は変わっていない。多くの広告主は、問題のある投稿に広告が表示されることを恐れて二の足を踏んでいることは間違いない。

このような状況では広告の回復は見込めない。対応策としては、投稿内容を監査するセクションを復活させて問題のある投稿は排除すること、そのような発言を行ったアカウントは永久追放する。この2つにしか解決の方法は無いように思えるが、イーロン・マスクは民主主義の基本は誰でも自由に発言できることだと繰り返し主張しているので、このような方法は取らないと思える。とすれば、今後経営状況はさらに悪化して、従業員が与えられたストックオプションを45ドルを行使する可能性はほとんどなさそうだ。

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