EUのAI法

by Shogo

EUは、人工知能(AI)を規制する法案に合意した。AI技術は、社会や経済に大きな影響を与える可能性があることから、その利用を制限するための世界初の試みとなる。

「AI法」と呼ばれるこの法律は、AI技術の潜在的な利益を活用しながら、自動化による雇用喪失、オンラインにおける誤情報の拡散、国家安全保障の脅威など、潜在的なリスクから人々を守ることを目指している。この法律は、まだ最終承認が必要だが、主要な枠組みは固まった。これは、今後、世界のAI規制に影響を与えることは間違いない。

この法律は、警察や水やエネルギーなどの重要サービスの運営など、AIの最も危険な利用に焦点を当て、使用を一部制限することを求めている。 それは、これらの領域でAIが効果的に活用できる可能性が大きいが、反面大きなリスクを伴うからだ。

AIは、捜査や犯罪の予防に大きな役割を果たす可能性がある。例えば、顔認識技術は、犯罪者の身元特定や潜在的な脅威の早期発見に役立つ。また、AIが、捜査の膨大な量のデータ分析を支援することで、捜査の効率化や精度の向上につながる。ただし、AIの使用には、プライバシーや差別などの懸念もある。このため、顔認識技術の使用は、特定の安全保障や国家安全保障上の例外を除いて制限されるようだ。

AIは、水やエネルギーなどの重要サービスの効率化に役立つ。例えば、インフラの監視や故障の予測に使用することで、インフラの安定性と安全性を高めることができるし、エネルギーの需要と供給を予測することで、エネルギーの効率的な利用に貢献することができる。しかし、これに依存した場合にAIの誤作動などによる社会的影響を懸念しているものと思われる。

さらにAI法は、OpenAIのような大規模汎用AIシステムの開発者を規制する内容を含んでいる。チャットボットやディープフェイクなどの画像を生成するソフトウェアは、ユーザーに対して生成されたものがAIによって作成されたものであることを明示する義務を定めている。また、インターネットから画像を無差別にスクレイピングして顔認識データベースを作成するなどの行為は、完全に禁止されます。規制に違反した企業は、世界売上高の7%に相当する罰金が科せられる可能性がある。

しかし、この法律が規制上の突破口として称賛されている一方で、その有効性については疑問が残る。この政策の多くの部分は、12~24カ月間は施行されない予定であり、AI開発のスピードを考えるとかなり長い時間だ。この間に、多くの技術の開発が進み、新しいサービスが生まれるだろう。しかし、それでも個人情報保護についてはEUが定めた「EU一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Regulation)が世界的な影響を与えたように、このAI法は、AIの利用について世界的な影響力を持つことは確実だ。

個人的には、顔認識技術による犯罪防止については、AIを活用して行なってもらいたいと思っていた。それは、先日、パリ・オリンピックの開会式が競技場ではなく、セーヌ川で行われるというプレゼンテーションを見たからだ。世界情勢を考えると、2024年夏のパリでのオリンピックはテロのターゲットとして可能性が高い。そんな状況で、街中で開会式を行い、60万人もの人がセーヌ川周辺に集まるイベントはテロリストを招いているようなものだ。

このようなイベントに向けて、顔認識で警備を行わないと大変なことになると思っていた。12~24カ月間は施行されない予定や、オリンピックの警備という国家安全保障上の例外を考えると、AIによる顔認識がパリ・オリンピックで使われるのかもしれないが、全力で守ってもらいたいものだ。そのプレゼンテーションを見て、オリンピックの時期にパリに行きたいと思ったが、テロの恐怖で、その気にはならなかった。

米国では、バイデン政権が、 AIの国家安全保障への影響に焦点を当てた大統領令を発して、一部の制約を加えている。一方、英国、日本、およびその他の国は、より介入しないアプローチを採用している。しかし、EUでAI法が施行されれば、世界的な影響はあるので、世界のAI開発会社は、このAI法を確認して、サービスやシステムの改修に追われていることだろう。

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