目覚ましい進化を遂げる生成AIは、創作活動にも大きな影響を与えようとしている。しかし、その一方で、著作権に関する問題も浮き彫りとなっている。
今週、Midjourneyは利用規約を変更し、著作権問題が発生した場合に利用者を法的に保護するという強い姿勢を示した。しかし、一方でMidjourneyが、有名な映画やテレビ番組のシーン、キャラクターを再現できるという証拠があり、著作権侵害の可能性が指摘されている。一般的なプロントで、有名ない映画のシーンや出演俳優の画像がそっくりに生成された。これは、著作権で保護された画像を学習に使っているという動かない証拠だ。
著作権法は創作物に対する独占的な権利を創作者に与え、その利用を保護・管理する法制度だ。Midjourneyのような画像生成AIは、学習のために膨大な画像データを必要としている。これらのデータは、インターネット上の公開画像から収集され、その中には著作権で保護された作品も含まれる。ここで問題となるのは、学習に使用されるこれらの画像に対する著作権の有無と、AIが生成する新たな画像が元の著作権を侵害していないかという点だ。これが、そっくりということは、著作権侵害にならないのか。
「フェアユース」の解釈とその適用範囲
「フェアユース」(公正使用)とは、日本にはない法概念で、著作権で保護された作品を許可なく利用できる特別な条件を指す。例えば、批評、研究、報道、教育、パロディなどの目的で利用する場合には、著作権侵害にはあたらないとされている。しかし、AIの学習データとしての利用がフェアユースに該当するかは、法的なグレーゾーンで、各国での解釈に幅がある。画像生成AIによる生成画像が元の作品をどの程度関係するかを、またその目的が公共の利益に適っているかどうかが、フェアユースとして認められるかどうかの重要な判断基準となる。
また、AIが学習データとして著作物を使うことによって、元の作品の市場価値に影響を及ぼす場合、フェアユースとは認められない可能性も高まる。Midjourneyのそっくりな画像は、これにあたるのか。
ライセンス契約を結ぶ動き
著作権侵害の問題を避けるために、この学習データとしての利用に関して、著作権者との間でライセンス契約を結ぶ動きが見られる。たとえば、一部の企業は、著作権者に対して自らの作品がAIモデルの学習データとして使用されることについて同意を求め、正式なライセンス契約を結ぶことで、法的な紛争を避けている。AdobeのFireflyは、生成AIの画像の学習データとして、自社が所有するあるいは契約のある画像のみを使用しているので、著作権侵害の問題はないとしている。
画像の例ではないが、New York Timesは、自社の記事コンテンツが許可なく学習データに使われたとしてOpenAIを提訴している。Midjourneyも画像に関して同様のクレームを受けている。
生成AIの進歩とともに、MidjourneyやOpenAIなどの企業は著作権をめぐるいくつかの法的紛争に直面している。このような法的紛争は、しばしばAI技術の発展を遅らせる可能性があるが、同時に新たな解決策の出発点ともなりえる。著作権の問題が指摘された後、OpenAIはDALL-Eの使用条件を改訂し、ユーザーが著作権侵害をしないようなガイドラインを提供することで、コンテンツ生成における法的リスクを減少させようとしている。
著作権に配慮した学習データの構築
著作権に配慮したAIの学習には、著作権フリーな素材、クリエイティブ・コモンズライセンスの画像、または著作権者の明確な許諾を得たデータのみを使用するという原則が求められるようになるだろう。また、著作権を持つクリエイターとAI開発者が共にメリットのあるビジネスモデルの開発が進むかもしれない。これには、使用許諾料を基にした収益分配モデルや、クリエイターに対する直接的な補償を含むモデルが含まれるだろう。
フェアユースの適用範囲の確定以前に、AI技術の持続可能な発展を促進するためには、著作権者とAI開発事業者は、学習データのライセンスと透明性について合意が必要だろう。事業者は、データの使用に際しては透明性を確保し、必要な場合はライセンスを取得することが望ましい。
そうでないと、公平で持続可能な生成AI技術の発展に大きな障害になると予想される。その意味で、Midjourneyの強気な姿勢は、問題があると考える。