デジタル広告への課税

by Shogo

デジタル化が加速するエディア環境において、デジタル広告市場は急速に成長してきた。GoogleやFacebookといった巨大テック企業が市場を席巻し、広告収入の大部分を占める一方、テレビや新聞などの20世紀型メディアや従来型企業からの税収は減少している。この不均衡を是正し、テック企業が財政に公平に貢献する仕組みを構築するため、デジタル広告への課税が注目を集めているようだ。

MITスローンが、この状況を受けてデジタル広告課税の必要性が高まっているという分析を発表した。

この分析によると、デジタル広告課税の必要性に対する世界的なコンセンサスが高まっているそうだ。世界各国は、デジタルという特性を活かして、現地での税負担を最小限に抑えながら利益を上げている巨大テック企業から税収を得るための様々なモデルを模索している。これは、デジタル企業と従来型企業間の競争条件を平等にし、テック企業が公的財政に公平に貢献することを目指すものだという。

デジタル広告は、消費者の行動に影響を与えるだけでなく、広告支出のかなりの部分を占めている。グローバルのデジタル広告費は、2024年の見込みで、約6000億ドルだ。約42%がGoogleで、23%がMeta、9%がAmazonの売上になると見込まれている。GoolgeやMeta は広告モデルのプラットフォーム事業者で、Googleの全体の収益に占める広告の割合は77%、Metaの場合で95% 以上を占めている。これを、税制の異なる世界各国から吸い上げているわけだ。

Googleの広告収益は、約2,520億ドル。円換算で約37兆円だ。日本の広告費が全体で7兆円強ということを考えると、この広告収益の規模に目が眩む。

これらの取引に課税することで、各国政府はデジタルプラットフォームの経済的影響を反映した、財源を得ることができる。このような税収は、世界各国で公共サービスやインフラの資金調達に役立ち、20世紀型企業や消費者への財政負担を軽減する可能性があることを報告書は指摘している。

しかし、デジタル広告課税の実施には課題も伴う。特に、多くのデジタルプラットフォームが国境を越えて運営されていることを考えると、デジタル広告収入を公平に測定し、配分する方法を決定することが大きな課題となる。価値がどこで創造されているかを正確に評価し、それに応じて税金を課すためには、国際協力とデジタルビジネスに対応した税制が必要となる。利得が相反することで、各国政府の意見が食い違うことが予想される。

イギリスやフランスなどの一部の国は、すでに多国籍テック企業から税収を得るために、デジタル広告課税の実施に向けて動き出している。イギリスは2020年4月にデジタルサービス税を導入し、イギリスのユーザーから多額の収益を得ている大規模なデジタル企業を対象としている。同様に、フランスのデジタルサービス税は、フランスでの収益に基づいて大規模なテック企業に課税することを目的としている。

日本政府もデジタルサービス税に検討を進めていることが、経済産業省の資料から明らかになっている。それは、外国のデジタルサービス税が日本の法人税法上の外国税額控除の対象となるかどうかの検討を進め、日本のデジタルサービス税導入の可能性を探っているようだ。

しかしながら、「国際的な議論の動向を踏まえつつ、国際協調を重視し、OECDを中心とした国際的な議論の行方を見守りながら慎重に対応する」らしい。いつもの、問題を起こしたくない、場当たり的な対応だ。イギリスやフランスのようにさっさと導入することが望まれれる。

デジタル広告課税をめぐる議論は、公平性と経済的平等に関する懸念を提起している。20世紀型企業は歴史的に高い税負担に直面してきた。一方でデジタルプラットフォームは、市場での存在感と収益性にもかかわらず、急速に成長したために、しばしば有利な税制を受けてきたと言える。

もう一つの議論は、ソーシャルメディアの依存性との関連だ。青少年のソーシャルメディア依存を避けるために、タバコのように高い税金を、利用者ではなくプラットフォームに課すというものだ。利用者の年齢が把握できることから、一定の年齢以下の利用者の割合に応じて、税金を課すことでソーシャルメディア依存を抑制するという議論は、MITスローンの報告書には含まれていないが、デジタル広告への課税の1つの方向性として議論されている。

どのような方法にせよ、デジタル広告課税の実施には課題が伴う。しかし、デジタルプラットフォームによって生み出される収益を活用することで、各国政府は20世紀型企業とデジタル企業間の財政バランスを調整しより公平な税制を促進することができると考える意見が大勢を占めてきたようだ。別の言い方をすると、見逃せないほど巨額の税金の可能性があるということだ。しかし、今まで対応で位ていなかったのはmデジタル経済が国境を超えて展開しているからだ。今後、デジタル経済が成熟するにつれて、ますます国境を超えた税制を巡る議論の重要性は増していくだろう。

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