Googleの広告技術プラットフォームの財務状況

by Shogo

Googleは、世界最大の広告メディア企業だ。2024年第2四半期決算報告によると、Google全体の売上高は、前年同期比13.5%増の847億4200万ドル(約13兆2000億円)。そのうち、広告事業の売上高は前年比11%増の646億ドルに達している。つまり、76%が広告だ。

第2四半期決算で特に注目すべきは、YouTubeの広告収益の伸びだ。YouTubeの広告収益は前年比13.0%増の86億6300万ドル(約1兆3400億円)と、大きな成長を遂げた。他の部門では、 検索広告事業が主力であることは間違いなく、前四半期比9%増の480億ドルだった。全体の57%を占めている。

広告以外では、Google Cloudの売上高も好調で、28.8%増の103億5000万ドルとなった。Google Cloudは四半期収益として初めて100億ドルの大台を突破し、Googleの新たな収益の柱に成長しつつある。

それでも、Googleは広告事業の会社と言っても良い。だが、その事業の詳細は明らかになっていなかった。

しかし、最近の独禁法裁判でその内情が開示され、Googleの広告技術プラットフォームの財務状況が初めて明らかになった。この中で特に注目されたのが、Google Ad Manager(広告管理システム)とDisplay & Video 360(以下、DV360)という広告プラットフォームの収益だ。

Google Ad Managerの 2020年の収益は74億ドルに達し、純収益は15億ドルだった。

DV360は、Googleが提供するDSP(デマンドサイドプラットフォーム)で、Google広告を含める、最大級の広告在庫を保有し、多種多様なメディアに広告配信が可能だ。このDV360が22億ドルの収益を上げ、純収益は4億3800万ドルだった。

Google Ads(旧AdWords)も含めると、これらの広告技術部門は総計で150億ドルの収益を上げ、29億ドルの純収益を生み出している。

この数字をGoogleが裁判所に提出したのは、独占状態にないことを証明するためだ。その際に、Googleが主要な競合相手として挙げているのが、広告技術会社のThe Trade Deskだ。The Trade Deskは、広告主の広告買付に焦点を当てた技術を提供しており、DV360と直接競合している。2020年におけるThe Trade Deskの収益は、42億ドル(純収益8億3600万ドル)で、営業利益は1億5000万ドルだった。

この比較から明らかになったのは、GoogleのDV360がThe Trade Deskよりも収益が少なかったという事実だ。これは、多くの広告業界関係者にとって驚きであり、Googleが広告買付サイドにおいては必ずしも支配的ではないことを示唆している。これは、これまでの多くの広告関係者の認識と大きく食い違う。

また、注目すべきはGoogleの「テイクレート」(広告収益の中でGoogleが保持する割合)だ。DV360におけるテイクレートは15%で、The Trade Deskの20%よりも低い水準にある。Googleは、これを「DV360対The Trade Desk」という視点で評価しており、独占状態にないことを強調している。

Googleの広告が巨大な収益を上げている一方で、同社は独占禁止法の訴訟の中にある。特に、Google Ad Managerが、広告を販売するオンラインメディアの90%に利用されているという点が問題視されており、米司法省はGoogleが広告技術市場での独占的地位を利用していると主張している。The Trade Deskとの比較で、この独占の認識が変わるかが、裁判の行方を決めるのだろう。

もし、裁判でGoogleが敗訴するか、あるいは和解に至る場合、Googleの広告技術部門の一部が分割され、別会社としてスピンオフされるかもしれない。これは、広告市場と広告取引のビジネスの手順に大きな変動をもたらす可能性がある。

今回の独占禁止法裁判によって、Googleの広告技術部門の詳細が明るみに出たことで、同社がどのように収益を上げ、競合他社とどのように対峙しているのかがより明確になった。それでも、競合としてGoogleがあげたThe Trade Deskと比較して、大きな収益をあげていることは事実だ。

Googleが広告業界で依然として強力な地位を維持している一方で、同社のビジネスがどのように進化していくのか、また裁判の結果によってどのように影響を受けるのか、現時点ではまったく分からない。

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