広告ビジネスの行方

by Shogo

21世紀はデジタル広告の時代になった。デジタル広告は、日本の広告費でも2023年には、、マスコミ4媒体合計のシェア31.7%を遥かに超えた45.5%に達している。

特にiPhone登場以降のスマホの存在は、メディアや広告にとって非常に大きい。これが広告の世界を一変させた。だが、その流れは変わりつつある。まず、プライバシー意識の高まりだ。それに伴って、デジタル広告を支えてきたクッキーを始めとしたユーザー追跡技術への、世の中一般の反感だ。

この流れに沿ったものかは分からないが、2024年9月9日、米国司法省(DOJ)は、Googleの広告事業が独占的地位を乱用し、広告主にとって不当に高い広告料金につながっていると主張する反トラスト法訴訟を開始した。今回の訴訟は、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、ニュージャージー、ニューヨーク、ロードアイランド、テネシーを含む8つの州も参加しており、Googleが「広告技術業界において、webメディア、広告主、ブローカーがデジタル広告を円滑に進めるために使用する広告取引ツールを支配することにより、正当な競争を阻害した」と主張している。

もしGoogleが敗訴した場合、裁判所はGoogleに対し、広告の売買を行うソフトウェア、取引を完了するためのマーケットプレイス、インターネット上で広告を表示するためのサービスなど、広告技術製品の大部分の売却を強制する可能性がある。これは、Googleの中核事業である広告事業に大きな打撃を与え、AI時代における競争において、既存企業や新興企業との戦いをさらに厳しいものにする。

Googleは司法省の主張を否定し、「私たちは、インターネット上で広告掲載を可能にするために積極的に競争している何百もの企業の一つに過ぎない」と声明を発表した。 裁判は数週間にわたって続く見込みで、判決が出るまでにはさらに数週間、あるいは数ヶ月かかる可能性がある。

DOJの訴訟によると、Googleは自社のツールを通じて費やされる広告費100ドルのうち約36ドルを得る。Googleの親会社のAlphabetの2023年の財務諸表によると、広告事業は総収益の78%を占めている。世界最大の広告企業である。

Alphabetの広告部門は、海外でも厳しい監視に直面している。英国の競争・市場庁(CMA)は、Googleがオンラインディスプレイ広告における支配的地位を利用して、自社の広告技術サービスを優遇している可能性があると発表した。米国がGoogleの広告帝国の一部を解体することに成功すれば、欧州の規制当局も巨大IT企業の支配力を抑制するための取り組みを強化する可能性がある。

Googleは、その検索連動型広告や広告ビジネスの巨額の収益を基に様々な分野に無料のサービスで参入して、既存の業界を破壊してきた。例えば、メールやweb分析などは、その例だ。Googleの解体により多くのサービスが有料化されれば、確かに競争環境が生まれ、何でも無料のGoogleを使いということも無くなるだろう。それは健全なことだ。

DOJの訴訟の結果はまだ不透明だが、メディアによれば、この訴訟が米国の将来の独占禁止法執行の試金石となる可能性が高いということだそうだ。そして、Googleの広告ビジネスについての判決は、広告業界のあり方も大きく変えることになるだろう。

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