Netflixがスポーツ中継に新たな一歩を踏み出した。これまでも、小規模なスポーツイベント中継、スポーツドキュメンタリーやリアリティ番組を配信しているが、高騰するスポーツ放送権料から距離を置いてきた。だから、本格的なスポーツイベント中継は、今回のマイク・タイソンとジェイク・ポールのボクシングマッチの生中継が初めてであり、Netflixのスポーツ配信戦略における重要な第一歩となった。
Most Valuable Promotionsによると、この試合はピーク時に6,500万の同時ストリームを記録し、6,000万世帯が視聴したという。これは、今年のクリスマスに行われたNFL中継の2倍以上の数字だ。NFLの2倍という数字はすごいものだ。マイク・タイソンは、まだまだ価値があるようだ。
しかし、この膨大なアクセス集中はNetflixのサーバーにとって大きな負担となったようだ。ソーシャルメディア上では、画質の低下やバッファリング、接続断絶などの苦情が相次いだ。Bloombergによると、イベント中に10万件以上のNetflixストリーミング問題の報告があったという。2023年のワールドカップの「日本対クロアチア」戦は、一部でアクセス制限が行われたというが、試合終了直後の視聴者数は2,300万を超えていたと報道されている。これを考えると、6,500万の同時ストリームはすごい数字だ。流石のNetflixも持ち堪えられなかったようだ。
Netflixはこれまで、高騰するスポーツ放送権料を理由に、ライブスポーツ中継に消極的な姿勢を示してきた。しかし、今回のボクシングマッチの配信は、同社の戦略に変化が生じていることを示唆しているのかも知れない。
Disney+ Hotstarが昨年、クリケットのワールドカップで5,900万の同時ストリームを記録したように、ライブスポーツは依然として多くの視聴者を引き付ける力を持っている。Netflixは、今回の配信で得られた経験を活かし、今後、より積極的にスポーツ中継に取り組む可能性がある。
Netflixは、これまでスポーツ中継は行わなかったが、WWE、NFL、UFC、F1など、複数の主要スポーツリーグとの提携を積極的に進めてきた。これらの提携は、独自のドキュメンタリーシリーズ制作や革新的なスポーツコンテンツ開発につながっている。「Drive to Survive」、「Quarterback」や「Receiver」といった番組は、放送権を必要としないスポーツへのアプローチの代表例と言える。
スポーツ配信市場は急速に拡大しており、米国の主要テック企業だけで既に205億ドル(約3兆円)を配信権取得に投資している。Netflixは、この巨大市場において、どのようなのポジションを確立しようしているのだろうか。
これまでの、Netflixのスポーツ配信戦略の特徴は、単なる中継を超えた多角的なアプローチにある。従来のスポーツ番組の概念を覆し、ストーリーテリング、ドキュメンタリー、そして革新的な視点でスポーツを再定義しようとしてきた。これが、リアルタイムのスポーツ中継までさらに踏み込むのかどうか。
Netflixがスポーツ中継に本格的に参入すれば、スポーツコンテンツ市場に大きな影響を与えることは間違いない。豊富な資金力と世界中のユーザーベースを持つNetflixは、既存の放送局やストリーミングサービスにとって強力なライバルとなるだろう。
今後、Netflixが、どのようなスポーツコンテンツを獲得し、どのような配信戦略を展開していくのか、注目が集まる。