XIOUSで見かけた「スニペット文化」という見出しの記事を読んでみた。
「スニペット」とは、短い断片的な情報のことである。検索結果に表示される短い説明文もスニペットと呼ばれる。
記事では、現代社会において、私たちが日々触れる情報の多くがスニペット化されていると指摘していた。TikTokやInstagramのショート動画、短いポップソング、要約されたニュース記事など、あらゆる情報が断片化され消費されているのである。
そして、このスニペット化は様々なところに影響を及ぼしているという。例えば、ポップソングはTikTokやInstagramでの拡散を意識し、よりシンプルで反復的な構造になっている。ワシントンポストのレポートによれば、ビルボードホット100にランクインする曲の平均長さは、1990年代の4分から2020年代には約3分にまで減少しているそうだ。また、子ども向け番組も以前より短くなっているという。
記事では、オーストラリア発の子ども向けアニメ番組「Bluey」が例として挙げられていた。日本では未放送のようだが、世界的に人気の高い番組らしい。質の高い番組として知られるBlueyでさえ、スニペット化の影響を受けているという。通常のエピソードは約7分と短く、子どもたちの集中力が持続する時間を意識した作りになっているそうだ。
最近、Blueyで初めて28分の長編エピソードが制作された。これは従来のBlueyとは異なり、より深い物語を描いた意欲作であったが、評判は芳しくなかったという。
このような集中力低下の背景には、脳の適応メカニズムが関係していると考えられている。絶えず変化する刺激に晒されることで、脳はより短時間で、より刺激的なコンテンツを求めるように変化していくのである。
私たちの日常生活を振り返ってみても、スマホを片手に常に新しい情報や刺激を求めてスクロールする行動が習慣化している。このスニペット化と関連して思い浮かぶのが「タイパ(タイムパフォーマンス)」である。
タイパとは、限られた時間の中でどれだけ効率的に情報や体験を得られるかを重視する考え方である。タイパ重視の価値観が強まった背景には、スマホの普及やSNSの浸透による情報過多が挙げられる。膨大なコンテンツに囲まれ、限られた時間の中で「いかに多くの作品や情報に触れられるか」を求めるようになってきたのだ。とはいえ、個人的には映画やドラマを倍速で見ることはない。しかし、YouTubeは基本的に2倍速で視聴し、オーディオブックも2倍速で聴いている。
タイパという言葉が象徴するように、2倍速で映画を見る風潮は、限られた時間の中でより多くのことを経験したい、効率的に情報を得たいという現代人の欲求から生まれている。
その主な要因としては、情報過多、選択肢の増加、時間不足、倍速視聴の容易さ、SNSでの共有などが挙げられる。
スニペット化は情報を短い断片に分割して提供する形式であり、タイパは時間対効果を重視する考え方である。
両者は密接な関係にあり、スニペット化はタイパ重視の考え方を促進する側面がある。スニペット化された情報は、短時間で要点を掴むことができ、スキマ時間にも手軽に消費できるため、タイパ向上に役立つ。
しかし、スニペット化された情報に慣れると、注意持続時間が短くなり、長文を読むことやじっくり考えることが苦手になる可能性もある。これは、タイパ重視の考え方が、集中力や深い思考力を阻害する可能性を示唆している。
タイパを追求するあまり、スニペット化された情報ばかりに偏ってしまうのではなく、長文を読む、じっくり考えるといった時間を持つことも大切だとは思うが、誰しも忙しい。それでも情報との付き合い方、時間の使い方をバランス良くすることが、真のタイパ向上に繋がる。このようなことを学生には伝えたいと思うが、聞いてもらえるのだろうか。