司法省から独禁法違反で会社分割などを含む訴訟を起こされているGoogleが妥協案を提出した。
Googleは当初より司法省に対し、自社の検索エンジンが選ばれているのは、品質の高さによるものであり、違法な行為は行っていないと主張している。しかし、司法省が主張を変えないので戦術を変えたようだ。
Googleが提出した案は、以下の通り。
- Appleなどとの契約の柔軟化 AppleやSamsungなどが、ユーザーに複数の検索エンジンを選択肢として提供することを許可する。
- Androidへの複数検索エンジンの搭載 携帯電話メーカーは、Androidに複数の検索エンジンを搭載することができるようになる。
- ブラウザのデフォルト検索エンジンの変更 AppleやMozillaなどのブラウザメーカーは、少なくとも12ヶ月ごとにデフォルトの検索エンジンを変更することができる。
Googleは、これらの変更により、競合他社が市場に参入する余地が生まれると主張している。ただし、この内容では実効性に乏しく司法省が納得するとも思えない。また、Googleは司法省の要求は行き過ぎであり、消費者のプライバシーやセキュリティを危険にさらし、アメリカの技術革新を阻害すると警告した。これも、意味のない発言だ。何か言わなければいけないから付け足したのだろう。
これまでの動きは以下のようになる。2024年8月、米連邦地裁はGoogleがオンライン検索市場における独占的地位を違法に維持してきたとの判決を下した。この判決を受け、司法省はGoogleにChromeブラウザの売却を含む抜本的な改革を要求している。一方、Googleは10月に独自の別の改善案を提出し、現状維持を大きく変えない範囲での対応で済ませようとした。
司法省の要求 Chrome売却、Android分離、巨額の制裁金
司法省は、GoogleがAppleやSamsungなどの企業に資金を提供し、ユーザーがウェブブラウザやスマートフォンを開いた際に自動的にGoogle検索が表示されるようにする契約を結んでいたことを問題視している。この契約により、Googleは競合他社を排除し、検索市場における独占を維持してきたと主張しているのだ。
是正措置として、司法省はGoogleに対し、以下の要求をしている。
- Chromeブラウザの売却 世界で最もシェアの高いブラウザであるChromeを売却することで、Googleの検索市場における支配力を弱める。
- Androidの分離 スマートフォンOSであるAndroidをGoogleから分離し、独立した事業体とすることで、競合他社のOSが市場に参入しやすくなる環境を作る。
- Appleなどとの契約禁止: AppleやSamsungなどとの間で、デフォルトの検索エンジンとしてGoogleを設定する契約を禁止することで、競合他社にも平等な競争の場を提供する。
- 競合他社へのデータ提供 Googleは、競合他社の検索エンジンに自社の検索結果を表示することを許可し、さらに10年間、競合他社にデータをアクセスできるようにする。
- AI製品の分離 Googleは、検索と競合する可能性のあるAI製品への投資を分離する。これは、Googleが新たな技術分野でも独占的な地位を築くことを防ぐための措置。
AIへの投資を分離しろという要求は、Googleに潰れろと言っているようなものだ。2000年にマイクロソフトの分割を求めた訴訟でも。これほど厳しいものではなかった。それに、対価を払って自動的に何かが表示するということは、通常の商取引だと思うので、司法省の判断には違和感を感じる。
Googleは、2021年に、Apple、Mozilla、Samsungなどに検索エンジンの指定のために年間263億ドルを支払っているとも報道されている。これだけ払っても、検索連動型広告で稼げるということだ。
Googleは、検索および関連事業から年間1,750億ドル以上の収益を上げており、これは同社の収益の半分以上を占めている。これは日本円で25兆円以上の額であり、日本の総広告費が7兆円少しということを考えるといかに巨額の広告収入かがよく分かる。
また、Googleの親会社であるAlphabetの時価総額は、2兆3,500億ドルだ。これは、400兆円近い額であり、日本の株式市場全体が1000兆円未満ということを考えると、とてつもない額だ。
Googleは、裁判所の判断に関わらず、控訴する意向だ。それは当然だろう。この金の卵を産むガチョウは守らなければならない。裁判所は、来年中に是正措置について決定を下す予定だそうだ。
Googleの独禁法訴訟は、巨大テック企業の支配力に対する懸念が高まる中で、重要な意味を持つ訴訟だ。だが、これが規制緩和を行うとみられる次期トランプ政権では、どのような判断されるのか注目だ。