Netflixがライブスポーツ配信に本格的に乗り出している。NFLやWWEとの大型契約に続き、今回はFIFA女子ワールドカップの米国における独占放映権を獲得した。かつては、スポーツの高額放送権に背を向けて、単発のスペシャルイベントに留まっていたNetflixが、ライブスポーツに力を入れ始めた。
今回、Netflixは2027年と2031年のFIFA女子ワールドカップの米国における独占放映権を獲得した。これは、同社のライブスポーツ戦略における新たな一歩だ。女子ワールドカップは2023年に参加チームが24から32に拡大しており、Netflixは今後2大会で合計128試合を配信する予定だ。
Netflixのライブスポーツ配信は、2023年11月に開催された「The Netflix Cup」が最初だった。これは、ゴルフ番組「Full Swing」に出演するPGAツアーのスター選手と、F1ドキュメンタリー「Drive to Survive」に出演するF1ドライバーがペアを組んで対戦するイベントだ。言ってみれば手作りイベントだから放送権料は支払っていないだろう。
その後も、ラファエル・ナダルとカルロス・アルカラスのスペシャルテニス試合「The Netflix Slam」や、ジェイク・ポール対マイク・タイソンのボクシングの試合などを配信し、ライブスポーツ配信に徐々に進出してきた。
現在、Netflixのライブスポーツ配信リストには、以下の3つの主要な複数年契約が含まれている。3件ともに契約したのは2024年だ。
- FIFA女子ワールドカップ:2027年と2031年大会
- NFL:クリスマスデーの試合を3年間配信(来年から開始)
- WWE:フラッグシップ番組「Raw」を10年間配信(来年1月から開始)
Netflixがライブスポーツ配信に力を入れる背景には、いくつかの要因が考えられる。
- 加入者増加の鈍化 Netflixの加入者増加率は鈍化しており、新たな成長の柱が必要となっている。ライブスポーツは、新たな加入者を獲得し、既存の加入者の解約を防ぐための有効な手段となり得る。
- 競争の激化 Amazon Prime Video、Disney+、Apple TV+など、競合ストリーミングサービスがライブスポーツ配信に力を入れている。Netflixも、これらのサービスに対抗するために、ライブスポーツ配信を強化する必要がある。
- スポーツドキュメンタリーとの相乗効果 Netflixは、「Full Swing」や「Drive to Survive」など、人気のスポーツドキュメンタリーシリーズを制作している。ライブスポーツ配信は、これらのドキュメンタリーシリーズとの相乗効果を生み出し、視聴者のエンゲージメントを高めることができる。
Netflixの女子ワールドカップ配信は、アメリカにおけるサッカー視聴の現状に大きな変化をもたらす可能性がある。アメリカでは、サッカーの試合を視聴するために、複数のストリーミングサービスに加入する必要がある。
男子サッカー
- メジャーリーグサッカー (MLS) : Apple TV+ でほぼ独占配信
- アメリカ男子代表の親善試合 : Max と TNT で配信
- 男子ワールドカップ : Fox と FS1 で配信
- UEFAチャンピオンズリーグ : Paramount+ で配信
- プレミアリーグ : NBC、USA Network、Peacock で配信
- FAカップ、ブンデスリーガ、ラ・リーガ : ESPN+ で配信
- クラブワールドカップ : DAZN で配信
女子サッカー
- NWSL : ION、CBS、ABC、ESPN、Prime Video などで配信
- 女子スーパーリーグ : ESPN+ で配信
- ラ・リーガ女子 : DAZN で配信
- 女子ワールドカップ : Netflix で配信 (2027年、2031年)
このように、アメリカのサッカーファンは、様々なプラットフォームで試合を視聴している。Netflixが女子ワールドカップを配信することで、この状況はさらに複雑化する。
Netflixは、ライブスポーツ配信を強化することで、新たな視聴者を獲得し、既存の加入者のエンゲージメントを高めることを目指している。しかし、そのためには、コンテンツの充実し、 高画質・低遅延の安定した配信環境を提供する必要がある。まず、高額のスポーツ放送権市場に参入してコンテンツ調達コストが上がる。そして、スポーツ中継には遅延や障害は許されないから、ますますシステムの高度化が必要になる。このために、短期的にはボトムラインにも影響が出るかもしれない。