Appleが、史上初の4兆ドル企業となる可能性が出てきたそうだ。ロイターの報道によると、Appleは11月初旬から株価が16%近く上昇し、時価総額は約5,000億ドル増加。NvidiaやMicrosoftといったライバル企業を追い抜き、歴史的な評価額到達を目前にある。
現在のAppleの時価総額は約3兆8500億ドルで、これはドイツのDAX指数とスイスの主要株式指数SMIに含まれる企業の時価総額の合計を上回る規模だそうだ。
ロイターの分析では株価上昇の背景には、「AIへの投資家の熱意と、それがiPhoneの買い替えサイクル短縮につながるという期待」があるという。
1990年代には倒産の危機もあった企業としては、大きな変化だ。Macを最初に買ってから34年経つが、その頃の広告コピーは「For the rest of us 」で主流ではないことを明確にしていたものだが、大きく変わったものだ。iPhoneの時代になってからは、スマホは日本ではAppleが主流だ。
ChatGPT登場以降は、Appleは、Microsoft、Google、Amazon、Metaなどの競合他社に比べてAI戦略で後れを取っているとの批判も出ていた。こうした中、Appleは巻き返しを図るべく、AIへの投資を強化しているようだ。6月には、自社のアプリ全体に生成AI技術を展開する計画を発表。そして、9月に、OpenAIのChatGPTと連携した「Apple Intelligence」と呼ばれる次世代AI機能がiPhoneやApple Watch、さらにはiOSやmacOSなど、Appleのエコシステム全体に統合すると発表し、順次市場に投入が始まっている。日本語化は2025年になるようだが、英語ではすでに使える。
また、包括的なAI戦略を展開しており、OpenAIとは別に、独自の生成AIモデル「Ajax」の開発を進めているとも報道されている。この200億パラメーターの大規模言語モデルは、OpenAIの最新モデルに匹敵する性能を持つそうだ。これが搭載される時が、本当の「Apple Intelligence」の登場ということなのだろう。
さらに、Appleは中国市場でのスマートフォン販売を強化するため、中国ではOpenAIのChatGPTが使えないために、TencentやByteDanceといった中国のテック大手と提携し、彼らのAIモデルを製品に統合することを検討しているとの報道もあった。
ロイターによれば、Appleの株価収益率は33.5倍に上昇し、Microsoftの31.3倍、Nvidiaの31.7倍を上回っている。この高い評価額は、Warren BuffettのBerkshire HathawayがAppleの保有株を減らす要因にもなった。面白いものだ。
今後の見通しとして、様々なリスクがあるが、地政学的なリスクも大きい。トランプ次期大統領は、中国からの輸入品に対する最低10%の関税をかけると発言しており、Appleの事業に影響を与える可能性がある。そして、その報復で、中国でも事業に影響が出るだろう。中国はAppleにとっても大きな市場であり、その中国での売上の縮小という事も考えられる。そうなれば当然に株価にも影響が出る。
株式市場でのAppleとNvidiaの今年の躍進は、AIが株式市場で影響力を増していることを浮き彫りにしている。つまり、AI戦略で出遅れていると見られてきたAppleがAIの可能性で評価され始めたということになる。
Appleが4兆ドルの時価総額を達成できるかどうかは、今後のAI戦略とやや低迷しているiPhoneの販売回復にかかっている。大きくデザインが変更されると噂されている iPhone 17がどのように評価されるのかや米中対立の影響がどの程度かで4兆ドル達成と維持が大きく左右される。
それにしても、4兆ドルとは6000兆円だから、日本の株式市場の半分以上を一社で評価されているのはすごいことだ。