Appleはプライバシー保護に熱心な企業として、広告などでもそのことを強調している。だが、その評判を傷つけるような選択をすることもあるようだ。例えば、以前Siriとのやり取りを密かに収集していたことがあった。この結果、最近巨額の賠償金を支払っている。これは、Siriの学習データを同意を得ずに集めていたから批判された。
そして最近、また新たなプライバシーに関する懸念が提起され、ネット上で話題になっている。それは、Appleの写真アプリの「拡張ビジュアル検索」Enhanced Visual Search)という機能についてだ。
この機能は、デフォルトで有効になっているようで、デバイスが写真から取得したデータをAppleに共有することを許可する。確かに、設定アプリの「写真」から確認すると、デフォルトで有効になっていることが分かる。
「拡張ビジュアル検索」機能は、ユーザーが撮影した写真の中からランドマークや名所を特定し、その情報を検索するためのツールだ。この機能を利用することで、たとえば建物の写真を撮影し、その写真をスワイプアップして「ランドマークを調べる」オプションを選択すると、写真に写った建物の名前や場所が特定される。
これは便利で画期的な機能に思えるが、一部の批判者は、この機能が有効になっていると、Appleに画像データが送信されていることを批判している。
拡張ビジュアル検索の機能
Appleによると、このプロセスは、デバイス上のMLモデルが写真を分析し、「関心領域」(ROI)にランドマークが含まれているかどうかを判断することから始まる。MLモデルとは、パターンを認識して予測や判断を行う機械学習モデルだ。そして、写真には様々なものが映り込むがユーザーが何を意図しているかを判断するのが、ROIだ。写真の一部がランドマークドメインで検出されると、画像のその領域のベクトル埋め込みが計算される。
このベクトル埋め込みは暗号化され、Appleのデータベースと照合するために送信される。ベクトル埋め込みとは、画像データをMLモデルが読み取れる形式に変換する技術のことだ。
Appleは、画像データをMLモデルが解釈できる形式に圧縮することで、データのプライバシー保護に努めていると説明している。しかし、批判者は、この機能を有効にするかどうかを選択できるようにするべきだと主張している。勝手に写真を分析して、Appleに送るなということだ。
Appleは写真を盗んでいるのか?
Appleの説明によると、サーバーが「自由の女神」のようなランドマークの写真を識別することはできるが、写真自体、写真に写っている人、撮影日時、撮影したユーザーやiPhoneは特定できないそうだ。つまり、Appleは写真を「見て」いるわけではなく、暗号化されたデータのみを処理しているということだ。
この設定をオンにしても、Appleがプライベートな写真にアクセスすることはない。ただし、プライバシーに関心があるユーザーにとっては、デフォルトで有効になっているこの設定に不安を感じているようだ。
プライバシーを重視する場合は?
拡張ビジュアル検索は便利な機能だが、プライバシーを重視する場合は、設定アプリでこの機能を無効にできる。設定アプリの「写真」から「拡張ビジュアル検索」のトグルをオフにすることで、写真データがAppleに送信されるのを防ぐことができる。
このような問題が起きる理由は、Appleの説明不足だ。Appleは、ユーザーに明確な選択肢を提供し、プライバシーに関する懸念を払拭する必要がある。そのためには、より透明性の高い情報提供が必要だ。だから、デフォルトでこの機能をオンにしないで、使いたい場合についての説明をすることが必要そうだ。それで、プライバシーに敏感なユーザーが安心して利用できるだろう。
個人的には便利なので拡張ビジュアル検索をオンのままにしている。