生成AIを利用して画像、映像、文章やコンピュータープログラムが作れるようになって数年が過ぎた。だが、AI作成物の著作権については、多くの議論がある。
生成AIが作成した著作物に対する著作権の問題は、「誰がその著作物を所有するのか?」という問いに集約される。日本を始め、米国やカナダ、英国などの法的枠組みでは、基本的に著作物が「人間による創造物」であることを求めている。人間以外によって作成された作品、例えば動物や自然現象、あるいはAIによる生成物は著作権保護の対象外となっている。
例えば、米国著作権局は、AIを用いて生成された画像が含まれるグラフィックノベルについて「人間が行った編集やテキストの配置が作品全体として著作権を持つが、AI生成画像単体では著作権の対象外である」と判断した。この考え方をプログラムコードに適用すると、アプリケーション全体は著作権保護の対象となる可能性がある一方、AIが生成したコード部分にはその保護が適用されない可能性がある。
日本でも、芥川賞受賞者が生成AIの一部での利用を認めているから、その生成AIが生み出した部分については、どのように取り扱うかだ。
日本の著作権法において、AIは「作者」として認められていない。 著作権法は、あくまで「人間の思想や感情を表現したもの」を保護することを目的としており、AIのような機械が生成したものはその対象外とされている。
しかし、AI技術の急速な発展に伴い、この解釈は将来的に見直される可能性もあるかもしれない。文化庁は、AIと著作権に関する議論を継続的に行っており、今後の法改正も視野に入れているとも考えられる。
英国では、コンピューター生成物に関する著作権法が存在し、その「生成物を作成するための必要な手配を行った人」が著作者とみなされると規定されている。これは、コンピューターやソフトを使って制作した著作物を想定しているが、この規定が生成AIの使用にどのように適用されるかは、明確には定まっていないようだ。
カナダでは、AI生成物に関する法的枠組みがまだ不明確であり、2021年には、「生成物を作成するために手配を行った人に所有権を与える」という提案が行われた。これは、一つの考え方だが、まだ結論は出ていない。
一方、OpenAIは、同社の利用規約において「出力物に対するすべての権利、タイトル、および利益を利用者に譲渡する」と明記している。これは、カナダでの提案に近く、生成AIによる出力物の所有権・著作権を利用者に付与することを意味するが、法律的な解釈や他国での適用については依然として議論の余地がある。
著作権と所有権の違いの問題もある。著作権と所有権は異なる概念であり、それぞれに法的な意味合いがある。所有権は、生成物やコードやコンテンツに対する物理的または契約上の権利を意味する。一方、著作権は、創作物の使用や複製のための法律的な保護を指す。
AI生成物が著作権の対象外である場合でも、その所有権が誰に帰属するかは重要な問題となるかもしれない。この状況を受けてAI生成物に対して新しい「著者不在」の権利を創設する動きもある。
その事例として、英国では、ゲームに関する裁判例がAI生成物に適用される可能性があるようだ。裁判所は、プレイヤーが作成したゲーム内画像がゲーム開発者に帰属すると判断した。これは、プレイヤーが「生成物の作成に必要な手配を行っていない」ためだという。これは、マインクラフトのようなゲームでプレイヤーが作成したゲーム内画像を指していると思われる。
AI生成著作物やコードに関して、AI開発者に新たな責任を課すことになるかもしれない。例えば、AIが生成した著作物やコード部分を明確にラベル付けし、全体の著作権を主張する際に問題が発生しないようにする必要があるからだ。
生成AIがもたらす法的問題は、まだ明確な解決策がない領域だ。現在の法律は、AI生成物の著作権や所有権を想定していない。今後、AI生成物に関する判例や法律が整備されることで、この問題に対する明確な指針が示されることが期待される。