イーロン・マスクのxAI社が提供するAI画像・動画生成ツール「Grok Imagine」が、期間限定で全世界のユーザーに無料開放された。これまでSuperGrokやPremium+ Xの有料会員限定の機能だったが、無料開放で話題になっている。
イーロン・マスクは、この機能がユーザーに「超人的な想像力」を与えると豪語しており、実際にリリースから24時間で画像・動画合計2,000万回の生成を記録するなど、ユーザーの反響は圧倒的のようだ。
Grok Imagineは、テキストから画像を生成し、さらにその画像を最大15秒の音声付き動画に変換できるツールだ。最大の特徴は、その驚異的な生成スピードにある。画像生成は数秒、動画生成も20秒未満で完了するという高速性により、これまでの生成AIツールとは一線を画している。
Grok Imagineは4つの生成モード(Normal、Fun、Custom、Spicy)を搭載しており、特に「Spicy」モードは一部の成人向けコンテンツ生成を許可する点で他のAIツールとは異なる。しかし、この機能は同時に深刻な懸念も引き起こしている。
大きな特徴は、X(旧Twitter)とのリアルタイムな情報との連携だろう。 常に最新のトレンドを学習しているGrokは、他の生成AIにはない人間的でユーモラスな回答を生成できるという評価もある。これにより、リアルタイムの出来事を反映した画像や動画を生み出すことが可能になる。
しかし、これらの革新的な機能は同時に、深刻な問題もはらんでいる。
まず、ディープフェイクのリスクだ。Grok Imagineは、著名人や公人のリアルな画像・動画を簡単に生成できてしまうようだ。これは、フェイクニュースの拡散や個人へのなりすましといった悪用につながる可能性があり、大きな社会問題となる。すでにテイラー・スウィフトなどの有名人のディープフェイク動画が規制されることなく生成されたケースがあるようだ。これは、フェイクニュースの拡散や個人の名誉毀損、さらには選挙妨害などの政治的悪用につながるリスクを孕んでいる。
さらに著作権・肖像権の侵害の可能性もある。他の主要なAI動画生成ツール(Google Veo 3、OpenAI Sora、Runway、Pika)が実在人物の画像生成を明確に禁止している中で、Grokは著名人や公人のリアルな画像・動画を簡単に生成できてしまうようだ。このために、既存のキャラクターやブランドロゴ、個人の顔写真など、著作権や肖像権で保護されたコンテンツを生成・利用するリスクがある。
それから、コンテンツの倫理的な問題もある。「Spicy」モードのような機能は、ポルノグラフィや嫌がらせを目的としたディープフェイク生成に悪用される恐れがあるだろう。xAI社は一定の安全策を講じているとするものの、その効果は限定的であるとの指摘もある。
しかし、問題があるにせよ、「超人的な想像力」というコンセプトは、単なるコンテンツ制作にとどまらない利用があるだろう。Grok Imagineは、広告企画、製品デザインのモックアップ、イベントのコンセプトイメージ、サービスの世界観を表現するビジュアルなど、新しいアイデアを素早く視覚化するツールとしても機能する。これにより、アイディア企画段階での利便性が高いかもしれない。