Disneyが、OpenAIのSoraでキャラクター生成を許可するという発表を聞いたとき、非常に驚いた。文字通り「非常に」驚いた。Disneyが著作権管理に神経質なことは知らない人がいない。これまでも著作権に間することについては強硬に訴訟などで対応してきた。つい先日までもDisneyは、MidjourneyやGoogle、Metaといった企業に対し、自社キャラクターの無断使用で訴訟を起こしたり、警告書を送りつけたりしていた。
生成AI開発会社は、著作権の訴訟を数多くか買えている。まだ著作権については明確な法律も判例もない。そのような、著作権に混沌化した状況で、Disneyは、OpeenAIに10億ドルの投資を行い、生成AIに積極的に関わりを持つことを決めた。
なぜDisneyは方針を180度転換したのか。その答えは、明確には分からないし発表もされていない。多分、生成AI時代における現実への対応に舵を切ったということかもしれない。
Soraのようなツールが登場した2024年以降、ユーザーたちは規制も許可もなくDisneyのキャラクターを使った動画を作り続けてきた。Soraのアプリは公開後わずか5日間で100万ダウンロードを記録し、その多くが著作権で保護された素材を再現する動画を生成していた。Disneyのような権利者たちは激怒したが、洪水は止まらなかった。
Disneyが直面しているのは、かつてとは違う現実だ。若い世代はYouTubeやTikTokといったプラットフォームでショート動画を消費し、Disney+のような従来型のストリーミングサービスから離れつつある。自社のキャラクターが勝手に使われる状況を黙って見ているだけでは、ブランドの希薄化とビジネス機会の喪失という二重の損失を被ると考えたのだろう。
Disneyが投じた10億ドルという金額は、OpenAIの評価額5000億ドル超から見れば決して大きくない。だが、この契約には追加投資のオプションが含まれている。これは単なる提携ではなく、AI時代の新しいエンターテインメント経済圏への布石と考えているのかもしれない。
具体的には、2026年初頭からSoraユーザーはミッキーマウス、シンデレラ、ヨーダといった200以上のDisneyキャラクターを使った動画を生成できるようになる。ユーザーは自分がルーク・スカイウォーカーとライトセーバーで戦う動画や、バズ・ライトイヤーが登場する誕生日メッセージを作れる。そして、優れたファン制作動画はDisney+でストリーミング配信される。
この仕組みが機能すれば、Disneyは二つの目的を同時に達成できる。第一に、キャラクター使用をライセンス化することで収益化の道を開く。第二に、ユーザー生成コンテンツによってDisney+の「エンゲージメント」を高め、若年層を引き戻す。子どもたちがYouTubeに費やす時間は、今やDisney+や従来のケーブルチャンネルを大きく上回っている。この現実を無視できる企業はない。
報道によれば、DisneyとOpenAIの契約には、キャラクターの行動に厳しい制限が設けられている。ドラッグ、性的表現、アルコール、他社が所有するキャラクターとの交流は禁止されている。これは、Disneyのポリシーとしては譲れない線だろう。
Disneyは、生成AIのルビコン川を渡った最初のハリウッドメジャーとなった。他のスタジオが後に続く可能性は高いかもしれない。なぜなら、AIツールの人気は抑えきれず、むしろそれに乗ることで若い世代へのリーチを維持する方が戦略的に合理的だからだ。
