これまでは、インターネットの中は機能ごとに、明確に区画整理されていた。その壁が徐々に崩れつつある。
ソーシャルメディアでは、交流や情報発信、オンラインショッピングは、オンラインショッピング・サイトで行う。だから、ソーシャルメディアには、商品の販売の広告が出ているというのが、少し前までの仕組みだ。
しかしその境界はなくなりつつある。Instagram、Facebook、TikTok、Snapchatなどは、ソーシャルメディア上から、そのまま販売を行う機能を追加している。
特に中国ではこの動きは、以前より始まっていて、インターネットはテレビショッピングのような、有名人が商品の購入を勧めるようなサイトで溢れている。
今回YouTubeが発表したのは、この動きにYouTubeも乗り遅れないための計画だ。「ホリデー・ストリーム&ショップ」と題されたストリーミング・イベントでは、ソーシャルメディアのスターが登場して、商品やブランド品をYouTube上で直接販売する。
これは中国でも行われているのと同じ形式のショッパブル・ビデオと呼ばれるコンテンツで、今後中国以外の国でも広まってきそうだ。
この動きは、パンデミックでオンラインショッピングが増加したことより、Googleも広告収入だけではなく、物販の手数料ビジネスに参入する動きの一つだ。
アメリカにおいては、ケーブルネットワークで放送されているショッピングチャネルが盛んで、テレビで商品を買うことには慣れている。これは日本でも同様で、視聴者が少ない時間帯の地上波やBS放送などでいくつもの事業者がテレビショッピングを行っている。ただ日本においてもアメリカにおいても、ライブショーの形式で商品を販売を行うと言う事は、インターネット上ではまだ行われていない。しかし、中国においては、インターネットでのライブ販売は非常に盛んで40兆円程度の販売がこの形式で行われていると言う。
iPhoneが広告ターゲティングを制限したことにより、FacebookやInstagramといったソーシャルメディアでの広告ビジネスは大きな打撃を受けている。
この結果2023年まではサイトをまたぐ第三者クッキーを制限しないGoogleは広告の売り上げが急増していると言う。だが、2023年以降はどうなるか分からない。
一方、広告の売り上げに影響受けたFacebook、TikTok、Snapchatなどは、広告ビジネスに加えてショッピングのプラットフォームになるべく、直接販売ができる機能を付け加え始めた。
Googleは、ストリーミング・ショッピング・イベントを開始する以前より、オンラインショッピングに乗り出している。すでにShopifyやSquireのオンラインショッピング機能提供事業者と提携して、Amazonに対抗するようなオンライン・ショッピング機能の提供を目指している。
今回のYouTubeのショッピング・イベントも、今まで構築してきている機能を利用する。YouTube は、手数料率を発表していないが、本格的に始めれば、YouTubeの視聴者の規模を考えると大きなビジネスになるだろう。
今回YouTubeが主催するストリーミング・ショッピング・イベントでは、様々なソーシャルメディアのスタート契約をしてVerizon、Samsung、 Walmartなどの商品を販売すると言う。
ソーシャルメディアで商品を見つけて、Amazonなどのオンラインショッピング・サイトに行って、その商品を検索して買うよりも、ソーシャルメディアで直接買える方が便利だと感じる人が多いのは事実だ。多くのフォロワーを持つソーシャルメディアのスターが商品を勧めることで、YouTubeで購入する人が増えそうだ。
今回のイベントは1週間限定だが、今後YouTubeを使ってGoogleが様々な商品を販売するビデオが増えてくるのだろう。そうなると、Amazonが広告収入の獲得に乗り出して、大きな成果を上げているように、反対にGoogleがAmazonの本業の物販を侵食していく。どちらが、どの分野で勝っていくのか興味が尽きない。