Spotifyが、バルセロナのスポンサーに

by Shogo

Spotifyが、スペインリーグのバルセロナのメインスポンサーになった。男女のチームのユニホームとトレーニングウェアの胸スポンサーとバルセロナの本拠地スタジアムのカンプ・ノウのネーミングライツを得た。今年の夏からはカンプ・ノウはSpotifyカンプ・ノウと呼ばれるようになる。この権利は、今年の7月1日から。ユニホームの胸のスポンサーは4年間、トレーニングウェアの胸のスポンサーは3年間、カンプ・ノウのネーミングライツの期間は発表されていない。今回のSpotifyの契約により、今までの男子ユニフォームの胸のRakutenと女子ユニフォームのStanley Black & DeckerロゴはSpotifyのロゴに変わる。

地元のメディアによると、今回のこのSpotifyの契約総額は1年あたり6,000万ユーロから7,000万ユーロと言うことだ。日本円に直すと年間78億から91億の間と言うことになる。高いか安いかは、バルセロナの価値をどう考えるかによって、判断が分かれる。ちなみに、楽天の胸スポンサーとその他の付帯契約の総額は年間70億円と言われていた。この契約も単純なユニフォームスポンサーでないので、詳細がわからないと比べられない。

Spotifyがネーミングライツを得たカンプ・ノウは現在改修中で、改修後には収容人数が105,000人となる。サッカーファンにとってカンプ・ノウの名前は特別なものがある。そこで、まさかネーミングライツがつくとは思っていなかった。この改修工事やコロナ禍による収益の低下、さらに現在調査中の不正会計に伴う巨額の負債が影響しているのだろうか。

一方、Spotifyは、音楽にとどまらず、スポーツを含む他の領域に進出を始めている。2020年にスポーツとポップカルチャーのサイトとポッドキャスティングを運営するThe Ringerを買収している。さらに、スポーツ・ベッティングとファンタジースポーツのFanDuel Groupと提携をして、スポーツ分野のコンテンツの拡大を図っている。

定額音楽配信サービスは、インターネットとスマホの普及により音楽界に革命を起こしている。すでに全世界の契約者数は、5億2400万人に達している。そこで、Spotifyはトップ企業であり、そのシェアは31%。2位のApple Musicが15%、3位のAmazon Musicが13%だから、圧倒的なシェアを持っていると見える。Spotifyの収益は、急速に成長しており2021年には96億6800万ユーロに達した。

音楽配信サービスのビジネスは儲かる商売のようだ。会員の月額使用料の30%を手数料として取り、残りの70%をレコード会社、作詞家・作曲家、原盤権保有者、アーティストなどに分配する。この辺の仕組みは非常に複雑なようで、よくわからない。かなりの回数の再生回数を持つアーティストでも、その分配金はわずかと言うことが言われている。昨年の数字で、Spotify から50,000ドル以上の分配金を得たアーティストは1万3200人に過ぎないと言う。トップレベルのアーティストにはかなりの分配金が行くが、それ以外のアーティストへの分配金はかなり低いと言われている。このため、アーティスト側の不満は大きいという記事を見かける。

Spotifyのような定額音楽配信サービスの登場以降、音楽産業自体が変わってしまっている。ユーザにとっては非常に便利な反面、そのビジネスの仕組みは音楽会全体からは、あまり好ましくないと思われているようだ。実際にCD全盛期の1999年頃と比べても、配信サービスに変わった今の方が、音楽の市場規模は小さくなっている。だが一方、配信サービスによって過去のヒット曲も再評価され、ボブ・ディランやブルース・スプリングスティーン、スティングのような大物アーティストにとっては過去の作品の価値が高まり、全楽曲の権利をレコード会社に売却している。インターネットビジネスと同様に価値が一部の少数に収斂していくようだ。

だが、Apple、Amazonなどとの競争も厳しいために、Spotifyも、今のシェアを守るためにもマーケティングが必要である。そのために、世界中にファンのいるバルセロナのスポンサーは良い方法であろうし、音楽以外の領域への進出を始めていることから考えても、サッカーのチームと関係を深めること自体はメリットがある。そのための投資として今回のバルセロナのスポンサーシップはあまり高くないのかもしれない。

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