「ミロ展 日本を夢見て」

by Shogo

*本展主催者の許可を得て撮影しています。

最初にジュアン・ミロの作品を見たのは1970年の大阪万博の頃だった。多分テレビで見たのだが、万博の会場でも実際に見たことを覚えている。それは、それまでに知っていたどのアーティストの作品との違いに驚いたからだ。美術の歴史の知識もないなかで、あまりにも新しい表現に衝撃を受けた。そこからミロに興味を持って、その後、多くの作品を画集などでみるようになった。そこから、さらにシュールレアリストと呼ばれるようなアーティスト、特にパウル・クレーも好きになった。そういう意味で、絵画や絵画の歴史に興味を持たせてくれたきっかけとなったアーティストがミロだ。

その後バルセロナに、サグラダ・ファミリア教会を見に行く時も、ミロ美術館とピカソ美術館も最初から予定に入っていた。モンジュイックの丘にあるミロ美術館は、イメージしていたような美術館だった。白い、明るい建物で、室内にも光が溢れ、数多くのミロの作品が展示された美術館は、ミロを作り出した宇宙にいるかのような感じだった。

シュールレアリズムとひとくくりにされることが多いが、単に絵画の一潮流ではなく、ミロの作品には本当に人間の根源的な存在を引き出してきたような力強さを感じる。そういう意味で、ミロはユニークなアーティストだ。パウル・クレーにも似たようなことを感じるが、その強さはミロが勝っているというのが個人的な感想だ。

今回、Bunkamuraザ・ミュージアムで行われている「ミロ展 日本を夢見て」のブロガー内覧会にご招待いただいて、多くのミロの作品を見ることができた。この展示には初期の細密画の時代の作品から始まって、私が最初に見たようなシュールレアリスト時代の作品まで数多くの作品が展示され、彼のアーティストとしての多くを知ることができる。

そして、今回のミロ展の中心になっているのは日本との関わりだ。今回の展示で驚いたのは、ミロが日本の絵画や書画からインスピレーションを得て作品を完成させてきたことを知ったことだ。それに、ミロが、あのようにたくさんの日本の書画や民芸品を所蔵していたとは全く知らなかった。今回の展示は、それらの日本の文物とミロの作品の関係を詳しく知ることができる良い機会だ。

内覧会では、Bunkamuraザ・ミュージアム学芸員の吉川貴子さんから今回の展示についての説明があった。

*本展主催者の許可を得て撮影しています。

この説明によりミロの代表作とも言うべき、写真の吉川さんの背後の2作品にも、日本の影響が大きいと説明されて、初めてそのことを知った。これまでは、ミロらしい自由で大胆な絵と言う認識しかなかった。

まず左側の「ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子」の背景の黒は、日本からのインスピレーションにより発想されたものだそうだ。西洋絵画では、例えばカラバッジョのように光と影を表現するために、黒が使われるが、ミロのこの作品のような形で黒は使われた事は無いと言う。これは日本の書画からのインスピレーションだと説明されていた。また、中心に描かれている黒い色のオルガンも書の文字を思わせる。これを見て、今までは日本的なものを感じたことはなかった、しかし、言われる前から、親近感を感じたのは、私が日本人だからだろうか。

右の「絵画(カタツムリ、女、花、星)」では、その文字が作品の中にイメージとともに書き込まれている。これも、日本の書画のイメージからに触発されたものだと言うことだ。吉川さんのミロについての説明から、この50年の間、何も考えてこなかったことをたくさん学べて感謝したい。

展示の中では、2度の来日の詳細な情報、その日本滞在の経験をもとに描かれた作品群や瀧口修造との交流とその結果生まれた作品も展示されている。特に、瀧口修造との共同制作の過程を知ることができる貴重な資料は、これだけでも見る価値が十分にあった。

*本展主催者の許可を得て撮影しています。

今回の展示は、ミロと言うアーティストの多くの作品と同時に、それを生み出す原動力の1つとなった日本文化との関係を知ることができ非常に良い経験となった。今回、得ることができた知見を元に、日本の文化とミロと言う観点から、またミロの作品を見直してみたくなっている。確か、どこかに昔の画集があるはずなので、まず、それを探し出そう。

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「ミロ展 日本を夢見て」開催概要

開催期間  2022/2/11(金・祝)~4/17(日)

※2/15(火)、3/22(火)は休館

開館時間  10:00-18:00(入館は17:30まで)

毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

※金・土の夜間開館につきましては、状況により変更

会場  渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアム

https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/

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