アメリカのデジタル広告市場は、GoogleとFacebookやInstagramなどを傘下に持つMetaが圧倒的なシェアを持ってきた。この2社で2022年は50.5%のシェアが見込まれている。
しかし、今後はそのシェアが減少するとeMarketerが予測している。2023年に48.7% 、2024年に47.7%と減少する見込みだそうだ。eMarketerのこの予測の根拠は、TikTok、Amazon、Walmart、Appleが、今後広告メディアとして有力になってくると見込んでいるからだ。
さらに、eMarketerはSnapchat、Spotify、Yelp、Roku、Walmart、Instacart、IAC、Pluto TV、Tubiなど9つのプラットフォームが、それぞれ米国内だけで10億ドル規模の広告ビジネスになると見込んでいる。これらのプラットフォームは、すでに数千万人規模のユーザベースを持ち、彼らをターゲットとした広告は今後増加すると考えられる。
この予測に、今年の末から広告を入れるNetflixが入っていないのは、これらの企業に比べてユーザ数では負けていないにしても、広告を営業し配信する力が未知数だからなのだろうか
もう一つ、不思議なのは、Apple だ。Appleは現時点では広告メディア企業ではない。Apple TV+などに広告を入れるビジネスを予測しているということだろうか。
この予測の根拠の1つは、プライバシーポリシーの変更だ。すでにAppleにおいては、ブラウザの第3者クッキーやiPhoneの端末識別番号でユーザを特定する事はできなくなっている。この変更で、Metaは広告収入が大きく落ち込んでいる。その結果、Metaの株価は今年に入ってから半額近くまで下落した。
そして、2023年には、Googleが、そのブラウザChromeの第三者クッキーのサポートを停止する。これは、広告業界全体に大きな影響がでるだろう。このために、多くのユーザを抱えるプラットフォームの持つ第1者クッキーをもとにした広告配信が増加すると見込まれている。その恩恵を受けるのが、先の9社のプラットフォーム企業だ。
アメリカの広告費総額は2022年には3459億9000万ドルに達して、2021年に比べて13%の増加と見込まれている。これは、伝統的メディアの広告も含む総額だから、インターネット広告費だけだと、その増加率はもっと大きいだろう。日本の広告費の2022年の見込みはまだどこでも見ていないが、2桁の成長は期待できない。
それにしても、アメリカの広告費を、1ドル120円で計算しても、42兆円程度となる。日本の広告費が7兆円に達していないことを考えるとその規模の差に驚くばかりだ。日本は世界第二の広告市場であるが、その1位と2位の差に改めて驚く。人口が、3倍の規模だから、人口比で言えば20兆円規模は理解できるが、その倍だ。そこから見ると、やはりアメリカのメディアビジネスの規模と力が理解できる。