MLBは2023年シーズンに向けていくつかのルール改正を決めた。
まず、プレイの時間制限の短縮である。投手は塁上に走者がいない場合は15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に投球しなければいけない。また打者の方にも制限を設け、タイムアウトは1回しか取れない。
投手が、この時間制限に違反した場合には、自動的にボールがカウントされる。同様に打者のほうも違反した場合には、ストライクがカウントされる。この目的は試合時間の短縮である。MLBは他のスポーツに比べてテンポが遅く、試合時間が長いことから若者の野球離れが顕著となっている。これに対処するために試合時間の短縮を図ろうとしている。この決定に先立ってコミッショナーオフィスはマイナーリーグでこのルールを試験導入したところ試合時間が平均26分短縮されたそうだ。相当の効果が期待できる。
次のルール変更は、試合を面白くするために、守備シフトを制限する。このルール変更で内野手は内野の中に留まり、守備位置を横方向に大きく移動することを制限する。このルール変更により片方向に打球が飛ぶ打者にヒットが生まれる可能性が高くなる。つまり大谷シフトのような事は不可能になる。これはヒットを増やして試合を面白くするためのルール変更だ。
もう一つは、プレイヤーの安全のために塁のサイズを大きくする。現在の15インチ四方から18インチ四方に拡大される。これにより、内野手と走者の間に距離が広がり、衝突が回避される可能性が高くなる。この結果として塁間の距離は4.5インチ短くなる。選手の安全を守るだけではなく、際どいプレーが多くなり試合への緊張感が高まると思われる。
最後の塁を大きくするのは、良いアイディアだと思うが、シフトの禁止はやりすぎだ。プレーの形態を制限を加えると言うのはスポーツの精神に反するような気もする。
それから、投手の投球間隔の制限については、悪いアイディアではないが試合時間の短縮のためには、引き分けを、日本のように導入するのが手っ取り早い。MLBは、ともかく決着がつくまで試合が続く。ニューヨークに駐在していた頃、MLBの仕事をしていた。レギュラーシーズンは、ほとんど仕事では試合にいかないが、ポストシーズンについては業務があり試合に行くことも多かった。その際に東海岸で試合が行われる場合は、そもそも試合開始時間が遅く、試合終了時間はかなり遅くなる。そこへ雨などによる中断があった場合に待っていて、そこから決着がつくまで試合をするから真夜中を過ぎてしまうことが何度かあった。しかし、MLBは頑として引き分けを受け入れない。長い伝統があるスポーツで引き分けと言う概念が当初からなかったために仕方がないのかもしれない。
しかし、さすがに長い時間に渡って試合が続くと、選手の健康に問題が出そうだ。
これが変わったのは、パンデミックで試合数が減少した2019年に、延長戦では2塁に走者を置く、タイブレイクが導入されたことだ。これは2023年も導入されることになっている。これがあれば延長戦も早い回に決着がつく可能性がある。しかしそれよりも引き分けの方が手っ取り早い。
試合時間が延びる原因の1つは、アメリカのテレビ放送の広告時間を流す総量だ。初めてアメリカの野球を見たときに、イニングが変わってプレイが再開されるまで時間が長く、延々と内野手がボールを回しをしていることが気になった。これの理由はコマーシャルの時間をつぶしていたのだった。コマーシャルの時間が終わって、やっとプレーが再開される。
日本の放送では1時間の広告の収容時間は6分と決まっているが、アメリカでは13分も入る。この時間を潰さなければいけないために試合時間が伸びてしまうということがある。MLBもApple TV +の参入などで配信も多くなっている。そのために広告の時間についても割り切れば試合時間が大きく短縮される可能性がある。とは言えこの問題はビジネスに直結するために難しいかもしれない。