UEFA EUROでのアクティベーション不足

by Shogo

UEFA EURO 2024(ユーロ2024)が始まった。欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する、欧州のナショナルチームによる4年に一度の大陸選手権大会だ。第17回大会となる今大会は、2024年6月14日から7月14日にかけてドイツで開催される。前回のユーロ2020はUEFA60周年記念大会で、欧州11か国で分散開催された。しかし、開催されたのはコロナ禍で1年遅れて2021年だった。

開催国のドイツを含む24カ国が出場し、6つのグループに分かれてのグループステージが始まっている。各グループの上位2チームと、3位のうち成績上位4チームの計16チームが決勝トーナメントに進出し、優勝を目指す。フランス代表のエムバペ、イングランド代表のベリンガムやケイン、ドイツ代表のムシアラ、クロアチア代表のモドリッチなど、欧州の多くのスター選手の参戦が予定されているため、サッカーファンは、この一ヶ月楽しめる。今回の優勝国はどうなるだろうか。

大会の全51試合は、日本ではABEMAで無料中継される予定で、FIFAワールドカップ・カタール大会の時のようにABEMAの大判振る舞いがうれしい。

スポンサーシップの価値

UEFA Euro は、注目されるサッカー大会の一つであり、企業にとっては多額のスポンサー費用を投じる価値があるイベントだ。Adidas、Coca-Cola、Lidlなど、多く企業がが公式スポンサーとして名を連ねている。UEFAによると、前回のEuro 2020では18億8000万ユーロの収益があり、そのうち5億2000万ユーロがスポンサーシップによるものだった。これはUEFAの総収益の約90%を占める放送権料と合わせると、スポンサーシップが大会の収益に大きく貢献していることがわかる。

認知度の課題

しかし、多額の費用を投じているにも関わらず、消費者のスポンサーブランドに対する認知度は必ずしも高いとは言えない。TGM Researchの大会直前の調査によると、Euro 2024を連想するブランドとしてAdidas、Nike、Coca-Colaが上位に挙げられたが、Nikeは実際にはスポンサーではない。これは、NikeがUEFAとは別の形でサッカーに関わっていることや、ドイツの有名ブランドであるMercedesやBMWがリストに挙がっていることからも、消費者が必ずしもスポンサーシップを正確に認識しているわけではないことが示唆される。

Adidasの認知度は25.5%、Coca-Colaが9.0%、Lidl が1.3% となっている。一方、実際にはスポンサーではないNIKEが11.3%と高い認知度となっている。これは、NIKEが積極的にサッカーとかかわっていることや、ドイツサッカー協会のユニフォームスポンサーに次回サイクルから決まったことが影響しているかもしれない。

アクティベーション

この調査結果は、誰も広告に注意を払っていないので認知度が低くなるということと、大会スポンサーのアクティベーション不足という面もあると考えられる。スポーツマーケティングにおけるアクティベーションとは、スポンサー企業がスポーツ団体や選手・大会などとのスポンサーシップ契約で得た権利を、自社のマーケティング目的に沿って戦略的に活用することを指す。単なるロゴ露出にとどまらず、スポンサーシップの価値を最大化するための包括的な一連の活動だ。

スポンサーシップで得たマークの使用権や販促機会の権利を活用し、ブランドの認知向上、好意獲得、販売促進、顧客との関係構築などの目的に沿ったマーケティング施策を展開する。この結果、スポーツの持つ価値を自社のマーケティングに結び付けることができる。それが十分に行えないのであれば、スポンサーシップ投資に見合う効果を得ることはできない。

つまり、調査の結果から、EURO 2024の公式スポンサーは数億ユーロもの大金を投じているにもかかわらず、大会直前の時点では消費者の認知度は、いまひとつというのは、アクティベーション不足ということだ。

まだ大会は始まったばかりで、大会開催中にスポンサー各社がどのようなプロモーションを展開し、ブランド認知度を高められるかが注目される。自社のブランドを効果的に訴求できるかどうかが、巨額のスポンサー料に見合う投資効果を左右することになるだろう。

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