Topics APIの有効性

by Shogo

Googleは、そのブラウザのChromeからサードパーティー・クッキーを廃止する日程を再度延期して、今は2024年後半としている。当初は2022年までにサードパーティー・クッキーを廃止するとしていたが、これが2023年後半になり、再度2024年後半となった。これは、ポストクッキー時代の広告のターゲッティング技術が確立できないからだ。

一方、Appleは、そのブラウザのSafariのサードパーティークッキーの制限を2017年から始め、2020年にはITP(Intelligent Tracking Prevention)を導入して、完全にサードパーティー・クッキーを締め出した。そして、2021年には、iPhoneのすべてのアプリで個人データの共有をユーザが選択する方法に変更して、ユーザのweb上行動が追跡されない選択肢をiPhoneユーザーに与えた。結果は、8割程度が共有を許可しないを選択したということだ。

この違いは、Appleが基本的にはハードウェアのビジネスの会社であるのに対して、Googleは世界最大のインターネット広告会社だからだ。Appleは、このプライバシーポリシーの変更をマーケティングに活用して、盛んにプライバシーを守るiPhoneという広告を行っている。

サードパーティー・クッキーは、インターネット広告の成長させてきた。精緻なターゲティングを可能にするからだ。何かの商品に関心を持っているユーザーを特定して、その商品の広告を配信することができる。しかし、クッキーで特定の関心のあるユーザを特定できなければ広告の効果は著しく毀損されることが予想されている。

Googleは、サードパーティー・クッキー廃止後の、新しいターゲティング方法についてテストを続けている。当初、2021年3月に、FLoC(Federated Learning of Cohorts)と呼ばれる、グループでターゲティングを行い、個人の情報を保護する構想を発表した。しかし、これについてはプライバシーホールがあることが発見され、そのプロジェクトは、2022年1月に放棄された。その際に、Topics API構想を発表し、2022 年7月から広告関連企業に開放してテストを行っている。

Topics APIは広告のターゲットに使用するための興味・関心の領域を、ユーザー個人を特定せずに利用する。この興味・関心については、Googleは、New York Times、Vogue Business、Elle等のウェブサイトの関連ページの文脈を活用して興味・関心のカテゴリを生成しているらしい。つまり、あるユーザーがNew York Timesの車のページを閲覧していれば、車に関心のあるグループの中に、このユーザが含まれ、企業は車の関心のあるグループに対して広告をする。そして、この興味・関心の把握は、リアルタイムではなく、かなり短い間隔で行われるということだ。この興味・関心のカテゴリーだけが、広告主や広告テクノロジー企業に公開され、個人を特定する情報は公開されないために、プライバシーが守られる。

Microsoftが昨年AT&Tから買収した広告プラットフォーム企業のXandrが、Topics APIをテストした結果を公表している。これにいれば、現時点では、まだTopics APIの対象のデータ量が小さいために、効果が検証できなかったと言うことだ。

Xandrのテストでは、Facebookもユーザの関心を調べるためのサイトの1つとなっていると言う。Facebookのサイトに接触するユーザから、ニュース、ソーシャルメディア、スポーツ、芸術、エンターテイメント、家庭菜園などの関心領域を抽出して、これをTopics APIに組み込んでいると言うことだ。

現時点で不明なのは、実際に様々なサイトを訪問する個人を特定して広告するのではなく、あるサイトの関連する領域のページを閲覧したことによって、グループとして広告を行うことの有効性だ。考えられるのは個人を特定していないグループになると、その関心の程度が非常に薄まること、さらに間隔が短く関心領域が絞られていると言っても、リアルタイムでないために、サードパーティー・クッキーにより個人を特定して広告を配信するよりも、はるかに低いコンバージョンしか得られないことが考えられる。

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