YouTubeは、近年のTikTokの急速な普及への対抗策として、 YouTubeShortsを2020年に導入した。事前に準備をしていたのだろうが、2020年9月のインドでのTikTok禁止令を受けて、インドでリリースされた。翌年2021年3月にアメリカで、7月に全世界にリリースされた。
YouTubeShortsは、TikTokのように、15秒から60秒以内の短い動画で、スマホに合わせた縦型の表示だ。TikTokのように音楽をつけて編集する機能もあり、動画につけられたコメントに対して動画で返事をするような機能も用意されている。動画を中心にしたコミュニティーを作ることを意図したもので、交流を増やして再生回数を増やす仕組みだ。
画面表示が縦型と言うこともありスマホでの使用を想定しているが、YouTubeの検索窓に#Shortsと入力すれば、パソコンやタブレットでも視聴することができる。
YouTubeはShortsの月間視聴者数が15億人を超えたことを、2022年初めに発表している。2022年第二四半期の視聴者数は2021年の同期に比べて135%増加し、YouTube全体のすべての動画視聴の57%を占めるまで成長してきた。前年同期は21%に過ぎなかったことに比べると急成長しているとも言える。
しかしながら、これをビジネス面で考えるとYouTubeShortsは尺が短いために、広告の入るチャンスが少なく、広告収益への寄与は低いと思われる。このためにYouTubeとしては、さらに投稿数を増やして視聴回数をあげて視聴時間を伸ばしていく必要がある。
これを行うためにYouTubeは今までの動画投稿者との契約内容を変えてShortsでは人気投稿者に対して報酬を支払う方針を決めた。動画投稿者に報酬の支払いを行うのはTikTokは、すでに初期から行っていることで目新しいことではない。その意味では縦型の短編動画で、音楽等の編集機能が付いていることなど、全てYouTube ShortsはTikTokの模倣である。
現時点でYouTube本体の広告プログラム参加者は200万人を超え、動画投稿者への広告分配金は280億ドルを超えているとYouTubeは発表している。しかしこれは広告の分配金であり、投稿者への報酬ではない。YouTube Shortsの人気投稿者への報酬を支払うことにより、TikTokに対して投稿者を囲い込み戦略に出ていると思われる。
また今回新たに導入されるのは「クリエイター・ミュージック」と言う仕組みで、投稿者は人気のある曲を簡単にライセンシングし、動画再生で流れた曲の収益の一部を受け取れる。今までは、投稿で音楽を使った動画が再生され収益を生んでも、音楽に関する部分は音楽の権利所有者に全額支払われていた。新しい仕組みでは、この一部が動画の投稿者にも支払われると言うことだ。
コンテンツがどんどん動画化していく中で、TikTokとYouTubeの争いはますます激しくなっていくだろう。そして双方が動画の投稿者を囲い込むために様々なプログラムや報酬の案を提示する。ある意味の軍拡競争の時代に入ったと言える。