Spotifyが、オーディオブック市場に参入

by Shogo

音楽配信サービスの最大手のSpotifyが、オーディオブックの市場に参入した。人気作家の作品を含む30万のタイトルの配信を開始した。Spotifyは、音楽市場を定額制サービスで完全に変えてしまった。しかし今回のオーディオブックについては、1タイトルごとの販売で、音楽配信のビジネスモデルとは違っている。コンテンツの性質の違いもあると思われるが、Audibleなど他社と同様に既存の出版ビジネスのビジネスモデルを踏襲したものとなっている。ただし、そのAudibleも日本で聴き放題モデルなので、Spotifyというよりも著作権者の意向が反映されているのだろう。

オーディオブックの市場は、着実に成長しており、2021年のオーディオブックの,世界での売り上げは16億7000万ドルで、2020年から1年間で25%成長した。また1年に公開されるタイトル数も、2011年の7,200タイトルから、2021年には74,000タイトルと急増している。このように、成長する市場である。

日本においても、オーディオブック市場は同様に成長している。現時点の数字はないが、日本能率協会総合研究所によると、2020年の市場規模は100億円未満で、2024年には2,600億円に到達すると予測している。

オーディオブックの市場は、2桁以上の割合で成長していくことが予想される。そこに音源をビジネスとしているSpotifyが参入するのは合理的な判断だろう。しかしながら、すでに老舗のAudibleが2008年にアマゾンの傘下に入り、さらに事業を拡大している。日本でもAudible は2015年よりサービスを開始して、月額1500円の聴き放題の定額サービスを開始した。

また、すでにオーディオブック市場には競合も多い。日本ではオトバンクのaudiobook.jpが健闘している。世界的には、Audiobooks.comやAudiobooks Now、Downpour、Playsterなど多くの競合が、契約者を求めて争っている。そこでSpotifyが音楽市場を定額制で革新したような力を発揮できるか不明だ。しかしながら、Amazon傘下のAudibleと同様にSpotifyの強みはその資金力だ。それを生かして今後どのように市場を開拓していくのか。

日本企業としてはオトバンクのaudiobook.jpが大手で、対象の本が限定ではあるが、月額定額で聴き放題と言うサービスを行っている。このためにAudibleの日本のビジネス参入時に、やはり対象の本限定で聴き放題のサービスを始めている。しかしながら、Audibleも日本以外では定額制のビジネスモデルをとっておらず、1タイトルごとの販売となっている。その意味で、Spotifyのビジネスモデルと同様である。今後Spotifyはどこに強みを目指していくのだろうか。

Audibleを使い始めたのは、2000年代の初めの頃とか記憶している。英語の勉強を兼ねて、新刊のマーケティング関連の本のオーディオブックを買い始めたのがきっかけだった。最初はSonyのネットワーク・ウォークマンでMP3のファイルをダウンロードして使っていたが、その後AudibleはiTunesに対応し、ちょうどその頃に個人的にもウォークマンからiPodにスイッチしたこともあり、より便利にオーディオブックを聞くことができるようになった。

その後長くアメリカのAudibleを会員を続けてきたが、Audibleの日本進出を機に日本版サービスに移行した。ハードウェアとしては、最初はソニーのウォークマンだったが、iPodになり、その後スマホを使うようになって今ではスマホのみ使っている。オーディオブックの普及には、スマホの普及も大きく関係していると思われる。ともかく、アカウントを開設してスマホを通じて、簡単に音源が手に入る事は大きなメリットだ。

オーディオブックの市場は、出版市場の8~10%と言うことで、この限られた市場を、Spotifyがどのように競争していけるのか興味を持たれる。Spotifyの会員ではあるが、個人的にはオーディオブックについては、すでにAudibleとaudiobook.jpの会員のためにSpotifyを使い始める予定は無い。しかしながら、Spotifyでしか聞けないタイトルがあるのであれば、Spotifyのオーディオブックのアプリをダウンロードして、タイトルごとに聞き始めるかもしれない。タイトルごとの販売であれば、他サービスも併用することは、金銭的にも手間的にも、そう大きな問題では無い。だからSpotifyの今後の成功の決め手は、どのような独自の音源を手に入れるかと言うことになる。だが、著作権者もAudibleを無視することができないので、Spotify独自のタイトルを揃えるのは難しいだろう。さて、どうなるか?

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