国際通貨基金(IMF)は、先週、世界経済についての最新見込みを発表した。世界のGDPは2022年の3.5%から下方修正され、2023年は3%の成長にとどまる。さらに2024年は2.9%の成長との予測だ。
国別の予測では、インドがトップで2023年が6.3%、 2024年も6.3%の成長。2位は中国で2023年が5.0%、 2024年は4.2%。 3位はアメリカで2023年が2.1% 、2024年が1.5% 。4位には日本が入り、2023年が2.0% 、2024年が1.0%。相変わらずの低成長率だが、それを維持したことにより4位に入っている。5位はカナダで2023年の1.3% 、2024年が1.6%。 6位がフランスで2023年が1.0%、 2024年が1.3%。 7位がイタリアで2023年が0.7% 、2024年も0.7%。8位にイギリスが入り、2023年が0.5%、 2024年が0.6%。 9位がドイツで2023年が-0.5% 、2024年が0.9%となっている。
インドや中国が好調だ。2022年の経済成長率からわずかに減少するものの、他国と比べると成長を続けている。
反対に大きく落ち込んでいるのはドイツだ。多くの報道で目にするように、メルケル時代に市場としての中国に深くコミットし、エネルギーについては、ロシアに依存する体制ができてしまったことが裏目に出てしまっているようだ。現在の米中対立の問題やロシアのウクライナ侵略による経済制裁などの影響をもろに被った形となっている。これは常に経済が政治の影響を大きく受けると言う教訓となる。
日本の石油輸入の相手先は、経済産業省の8月の統計発表によれば、アラブ首長国連邦・サウジアラビア・クウェート・カタールが上位で中東依存度は94.6%と非常に高い。中東に石油を大きく依存している日本は、現在のイスラエルとハマスの問題が拡大すると大きく影響受ける可能性がある。つまり、ドイツと同じような状況に陥る可能性を否定できない。個人も国も常にバランスで何かに過度に依存することは良くない。
IMF発表によれば、世界経済全体としては、新興国や発展途上国では、パンデミック前の水準に戻っておらず、先進国との間での格差が拡大していると報告書に記している。経済成長回復の阻害要因としては、パンデミック以外にもウクライナにおける戦争、米中対立に見られるようなグローバル化の終焉、インフレ抑制のための金融引き締め政策や異常気象など、様々な要因が絡んでいるようだ。
そして、世界全体で問題になっているインフレは今後も少なくとも2025年まで続くと予想しており、ウクライナにおける戦争の今後、中東における戦争の可能性、地政学的緊張の高まりなど、不確定要素が多くあり、経済見通しの悲観的にならざるを得ないようだ。
このような状況中で、日本経済は巨額の貿易赤字を続けているが、これが回復に向かう事はあるのだろうか。少なくとも政府の経済政策では、そのような可能性は見出せない。政治は三流だが、経済は一流の言葉通り、民間企業が、どのような手を打つのかに期待する以外なさそうだ。