日テレが運用型広告取引プラットフォーム発表

by Shogo

テレビ広告費は、2019年にインターネット広告費に追い越された。このインターネット広告の成長の要因は数多くあるが、運用型(プログラマティック広告)の広告キャンペーンが可能だったことも一つだ。テレビ広告は、インターネット広告のように運用型にできないために、このままテレビ広告の減少が続くかと思っていた。だが、日本テレビがテレビ広告に運用型の手法を導入することを発表した。

広告業界は、インターネットの普及とスマートフォンの台頭で根本に変わった。特に、インターネット広告の成長を支えたのは、「プログラマティック広告」だ。電通の調査している日本の広告費でも、プログラマティック広告は、インターネット広告媒体費に占める構成比は85.4%となっている。

プログラマティック広告とは、データとアルゴリズムを用いて広告の購入と配信を自動化する手法である。この技術は、広告枠をリアルタイムで購入し、ターゲットオーディエンスに最も適した広告を配信することを可能にする。従来の広告手法と比較して、プログラマティック広告は、広告主にとってコスト効率が高く、ターゲティングの精度が高いという大きな利点がある。広告主は、消費者のオンライン行動データや関心、デモグラフィック情報を利用して、最適なターゲットに広告を配信することができる。

この広告手法は、インターネット広告において2008年頃から実用化され、インターネット広告成長の原動力となった。日本テレビが開発を進める「ARMプラットフォーム」は、テレビ広告にプログラマティック手法を導入する試みだ。このプラットフォームは、テレビ広告におけるリアルタイム入札やターゲットを特定した広告配信を可能にするようだ。日本テレビによれば、地上波広告の強みを活かしつつ、インターネット広告の利点も取り入れることを目的としている。

テレビ広告にプログラマティック手法を取り入れることで、広告主はより効果的にターゲットにリーチすることができるようになる。これで広告費用の効率化にもつながるため、最適な媒体購入が可能となる。また、消費者は自分の興味や関心に合った広告を見ることが増えるため、広告に対する関心や反応も向上する可能性がある。

データ駆動型のプログラマティック広告は、大量の消費者データを活用して、広告のターゲティングを精密化する。これにより、広告主は、消費者の興味やニーズに合わせた広告を配信できる。また、プログラマティック広告は、リアルタイムでの効果測定とキャンペーンの最適化を可能にする。これにより、広告主はキャンペーンの結果を継続的に追跡し、必要に応じて広告戦略を調整することができる。これらは、インターネット広告において実現していることだ。これは、20世紀型のアナログの広告取引や効果検証が不可能な時代に慣れている頭では理解できても、感覚的には受け入れるのに時間がかかる。

リリースを読む限り、ARMプラットフォームは、地上波広告においてインターネット広告と同様のリアルタイムなプログラマティック取引を実現する。ARMプラットフォームの最大の特徴は、放送数秒前に広告素材の即時決定が可能となる点だ。従来のテレビ広告では考えられなかったこの機能は、広告主にとって前例のないレベルの柔軟性とタイミングの精度を提供する。

ARMプラットフォームのもう一つの重要な特徴は、広告取引において「インプレッション」を指標として採用する点だ。これまでのテレビ広告は「視聴率」を主な取引指標としてきたが、インプレッション指標の導入により、モバイルデバイスやコネクテッドTVを通じた視聴が考慮され、配信時代においてより実用的な評価が可能になる。

さらに、ARMプラットフォームは地上波広告とインターネット広告の統合在庫セールスも実現する。これにより、広告主はARMプラットフォーム上で両方のメディアを横断した広告キャンペーンを実施できるようになり、メディア間のシームレスな広告展開が可能となる。

また、ARMプラットフォームには、広告枠への契約や広告素材の紐付けを自動化する技術の導入も検討されているようだ。これが実現すれば、契約時に決定した広告の露出量をリアルタイムで達成し、特定のマーケティングKPIを自動的に最大化することができるようになる。20世紀型の、広告を出して、結果も分からずお終いという世界とは隔世の感がある。

日本テレビは、この先進的なARMプラットフォームのサービス開始を2024年度末に目指しているようだ。

ARMプラットフォームによるプログラマティック広告の導入は、広告業界に大きな変革をもたらすだろう。広告主は消費者のニーズや行動をより深く理解することが可能になり、ターゲットに合わせたカスタマイズされたメッセージを送ることがテレビ広告でも可能になる。当然、日本テレビに続きて、他のテレビ局も同様のシステムの導入をしなければならない状況になり、テレビ広告のプログラマティック化が早晩実現するだろう。

広告業界は、伝統的なメディアも含めて、データ駆動型のアプローチにシフトしていくことは確実だ。データが蓄積することで、この技術は広告のパーソナライゼーションと効率性を大幅に高める方向に働く。今後、デジタルとテレビの両方でその効果を発揮し、広告のターゲティング、配信、最適化を根本から変え、広告業界のビジネスを形作っていくことは確実だ。

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