数日間、新聞を読んでいない間にメディアとサッカーで大きなニュースがあった。FIFAとAppleが、2025年に米国で初開催される新フォーマットのFIFA Club World Cupの全世界の放映権で合意間近とのニュースが報じられていた。この契約が実現すれば、サッカー界のみならず、スポーツ放送の在り方にも大きな影響を与えそうだ。
FIFA Club World Cup2025は、史上初の32チーム参加となる。各大陸のチャンピオンズリーグなどの成績を元に、ポイント制でランキングが決定され、上位クラブが出場権を獲得する。欧州勢のみ、UEFAのクラブ係数システムが適用される。
現時点で確定しているのは、以下の通り。浦和レッズがアジアから2022年のチャンピオンズリーグ優勝チームとして選ばれている。
アフリカ (4チーム)
- チャンピオンズリーグ優勝チーム (3チーム)
- 2020/21, 2022-23: アル・アハリ (エジプト)
- 2021/22: ヴィダッド AC (モロッコ)
- ランキング上位 (1チーム) 未確定
アジア (4チーム)
- チャンピオンズリーグ優勝チーム (3チーム)
- 2021: アル・ヒラル (サウジアラビア)
- 2022: 浦和レッズ (日本)
- ランキング上位 (1チーム) 未確定
欧州 (12チーム)
- チャンピオンズリーグ優勝チーム (4チーム)
- 2020/21: チェルシー (イングランド)
- 2021/22: レアル・マドリード (スペイン)
- 2022/23: マンチェスター・シティ (イングランド)
- ランキング上位 (8チーム)
- バイエルン・ミュンヘン (ドイツ)
- パリ・サンジェルマン (フランス)
- インテル (イタリア)
- ポルト (ポルトガル)
- ベンフィカ (ポルトガル)
- その他3チーム未確定
北中米カリブ海 (4チーム)
- チャンピオンズカップ優勝チーム (3チーム)
- 2021: CFモンテレイ (メキシコ)
- 2022: シアトル・サウンダーズ (アメリカ)
- 2023: クラブ・レオン (メキシコ)
オセアニア (1チーム)
- ランキング上位
- オークランド・シティ (ニュージーランド)
南米 (6チーム)
- コパ・リベルタドーレス優勝チーム (4チーム)
- 2021: SEパルメイラス (ブラジル)
- 2022: CRフラメンゴ (ブラジル)
- 2023: フルミネンセ (ブラジル)
- ランキング上位 (2チーム)
開催国枠
- 開催国枠 (1チーム)は未発表だ。
日程は、2025年6月15日 – 7月13日で、新しいフォーマットは以下の通り。
- グループステージ (8グループ、総当り戦)
- ラウンドオブ16 (トーナメント方式)
- 3位決定戦はなし
FIFAとの契約が実現すれば、Appleにとって、スポーツコンテンツ強化の大きな一歩となる。2022年にはMLSの10年間の全世界配信権を25億ドルで獲得しており、今回の契約でサッカーへの注力をさらに鮮明にした。スポーツ中継は視聴者獲得の切り札。他のストリーミングサービスもNFLやMLBなどの放送権を争奪しており、Appleもこの流れに乗ることで、Apple TV+の魅力を高めていく思惑だろう。
一方FIFAは当初、この大会の放送権料で40億ドルを見込んでいたが、パンデミックなどの影響で市場が冷え込み、Appleとの契約金額はその4分の1程度になる見通しだそうだ。それでもAppleという大手ハイテク企業と組むことで、新大会の価値を高め、スポンサー料なども引き上げられるとFIFAは期待しているのだろう。
ただし課題もあるようだ。現時点では全試合がApple TV+でしか見られない可能性があり、無料放送がないことにFIFA幹部の一部は懸念を示しているとのことだ。視聴者を広げるには無料での視聴機会も必要だろう。また、シーズン直後の選手の休養期間に大会を設定することへの批判も上がっている。FIFAはクラブや選手との調整を丁寧に進める必要がある。
AppleとFIFAの提携は、スポーツ放送の未来を象徴しているようにも思える。レガシーメディアからハイテク企業へ、そして個別放送権販売からグローバル一括販売へという流れだ。スポーツファンにとっては、これまで以上に高品質な映像を様々なデバイスで楽しめるようになる一方、放映権料の高騰で視聴料への跳ね返りも懸念される。