Appleが、iPhone 17などを発表した。iPhone Air やカメラ機能のアップグレードなどハードウェア面での進化は確かに印象的だった。
だが、注目すべきは語られなかったことだ。AIに関する発表が、まったくなかった。これについては、多くのメディが指摘している。たしかに、ChatGPTやGemini、Claudeといった生成AIが日常に溶け込みつつある今、Appleの沈黙はあまりにも対照的だ。
今のスマホ競争では、AIが主役となっている。Google Pixelシリーズは「Gemini Nano」をオンデバイスで動かし、Samsungは「Galaxy AI」を打ち出し、中国メーカーもこぞって独自のAIアシスタントを搭載している。
これに対しAppleは、Siriの刷新やApple Intelligenceの強化発表を期待されたにもかかわらず、何も出してこなかった。iPhone 17は高性能チップを搭載しているにもかかわらず、その計算力をAI向けとしては言っていない。
しかし、別の報道では、2023年以降、Appleは複数のAIスタートアップを買収し、大規模言語モデル(LLM)開発にも着手しているらしい。また、iOS 18では、デバイス上でのプライベートなAI処理を可能にするフレームワークが実装されるとも報じられている。
Appleの戦略は一貫してプライバシー・ファースだ。広告の機能を支えるクッキーの廃止にも早くから対応してきた。AIについても同じのようだ。AIの分野でも他社のようにクラウドベースで膨大なデータを集めるのではなく、ローカル処理にこだわる。つまりローカルなAIを志向している。
これは、AIの開発は、そもそもAppleのプライバシー・ファースの思想には合わないということだ。それは、広く多くのデータを集めて学習させるAIの開発もそうだが、クエラウドベースのAIを使いと、自分のデータやインプットが、管理できないところに出てゆくことになる。また、AIが自分の考えや趣味、行動履歴などを共有しておくことで、より最適な回答や解決が得られる。この部分でプライバシー・ファースとは並び立たないのかもしれない。
いくつかの論評では、Apple擁護もある。それは、Appleは、自社の価値を技術の革新性よりも体験の完成度に置いているからだとしている。その意味で、iPhone 17でAIをアピールしなかったのは、未完成な機能を売り文句にしないということだろうということだ。
まだわからないが、「Apple Intelligence」などのAI機能は、おそらくiOS 18またはMacの新機能として発表される可能性もある。AI戦争の真っ只中で沈黙するApple。それは技術的な遅れではなく、戦略的な沈黙と見るべきという意見もある。
だが、やはりAppleは遅れているという印象は強まった。