パンデミックの混乱の中で、多くの企業が苦境にある。しかしながら一方、株式市場は活況を呈している。同様にビットコインも高騰を続けている。2021年の初めに180万円程度であった価格は、11月11日に、740万円の記録に達した。その後、少し値段が下がりしているが、それでも12月6日現在では560万円と、年初から比べると3倍以上になっている。
この背景には、今後のインターネットや社会のあり方を変えるブロック・チェーンに対する期待があるのかもしれない。
今年話題になった言葉でNFTも挙げられる。NFTとは、nonfungible tokenで、非代替性トークンと訳される。これもブロックチェーンの技術を使って、デジタルデータなどの複製可能なものをユニークなものとして定義し、公的な所有権を確立して、販売可能なものにした。今までなら売れなかったようなデジタルデータなど様々なものが、NFTを使って市場で販売されている。しかも、その価格は驚くようなものだ。
このようにブロックチェーンを使った様々なものが登場するインターネットの新しいフェーズをWeb3と呼ぶようだ。そのキーワードは、分散化である。ブロックチェーン技術を使い、中心を持たず、全体で管理する仕組みが、インターネットだけではなく、今後の社会を形作っていく可能性がある。
ビットコインはその象徴でもある。通常の通貨のように、世界のそれぞれの国が発行し管理している仕組みとは違い、ビットコインは単一の管理者がいない。世界中の取引参加者が、その履歴を共有することにより、所有権が確認される。
ウェブ2.0はTwitterやInstagramのように巨大IT企業が、ユーザの個人情報を売買し、広告に利用することで成立している仕組みと違い、分散型のウェブのあり方と考えられている。
かつてはウェブ2.0という言葉がもてはやされた。その時代は巨大IT企業を生んだ。
Web3では、なぜウェブ3.0と表記されないのか理由はわからない。それはともかくWeb3では、ユーザ自体がデータを自ら管理し、巨大IT企業のような仲介組織なく、ユーザ同士が直接つながる仕組みが特徴と言われる。この中心的な技術がブロックチェーンとなる。
このインターネットの仕組みを促進する組織としてWeb3 Foundationが設立されている。この組織はイーサリアムの共同創設者が中心になって設立され、分散型ソフトウェア開発のために助成金プログラムを実施している。今後ブロックチェーンの技術を使い、分散型の様々なソフトウェアがやサービスが登場済することが期待される。
現時点ではその代表的なものは、プライバシー保護を中心に据えた分散型広告システムを採用しているブラウザのBraveだ。個人的にも、最近はBraveをメインのブラウザとして使用している。使っていて非常に快適だ。従来の広告モデルのブラウザでは、ユーザの行動履歴をもとに広告が配信されているが、Braveではユーザの同意なく広告が表示される事は無い。
今後様々なサービスが登場しプライバシーが保護され、かつオープンな社会を実現するために、Web3が貢献するとすれば、理想的だ。
ただしビットコインのように既存のシステムとの軋轢の生まれることも多くなるだろう。ビットコインは通貨ではなく、暗号資産と言われている。それは、当然既存の金融システムでは、通貨とは特定の国が管理する金融システムであり、国や特定の管理者が存在しないビットコインでは通貨と定義できないとされている。しかしながら、市場がありそれが取引されて、また支払いにも利用されるとすれば、それを通貨と呼ばないとするのは、単に既存のシステムと整合しないと言う事だけだ。
ビットコインのように、様々な分野の既存システムとの対立を乗り越えて、Web3がオープンの社会を作っていくまで、少し時間がかかるのかもしれない。
今世紀の始まりから世界を形作ったweb2.0も交代の時期が来たのかと、1990年代初めから、インターネットの移り変わりを見てきたので、過ぎていく時代を考えて感慨深いものがある。