科学者たちが語る食欲

by Shogo

スリリングな読書だった。粘菌の実験から始まって、ショウジョウバエ、ネズミ、人と、食物と生命の実験が語られる。

マントヒヒの食べているものが、無造作に食べているように見えて、見事にタンパク質、炭水化物、脂質がとれていたことの発見。サバクトビバッタが、タンパク質を求めて共食いをするエピソード。粘菌が、自然にタンパク質を求めること。そこで語られていくのは、生命の維持のために動物たちが、タンパク質を求めてものを食べると言うことだ。動物は、単に目の前のものを食べているだけではないと言うことがわかって驚いた。ちゃんと、生命維持のために、食べなきゃいけないものがわかっているようだ

そして、私達人類の味覚である塩味、甘味、辛味、苦味、酸味、うま味が、単純に味の好みではなく生命を維持をするために、その栄養素を食べるために与えられた能力だと言うことを知って驚く。

科学者たちは、タンパク質、炭水化物、脂質の配合を変えた食料を動物に与えて実験を繰り返す。特に粘菌やショウジョウバエと違って、ネズミの実験は大変な作業だったことが語られる。5年の歳月と6トンの餌を使って実験し、科学者たちは、寝る間もなく、実験を管理する。それを分析して、生命の秘密を見つけたようだ。ここまであまりの面白さに読むのが止められなかった。まるでミステリー小説を読むように引き込まれた。

その結果、すべての動物の実験結果は同じだった。タンパク質を多く、炭水化物を少なく与えられたネズミは繁殖能力が高いが、早死にする。タンパク質が少なく、炭水化物多く与えられたネズミは、太っているが長寿。ネズミだけではなく他の動物の実験でも同じ結果を得ているが、繁殖能力と寿命はトレードオフの関係にあるようだ。

高タンパク質で低炭水化物の食事をしたネズミが、痩せたまま早死にするところで、「セクシーな痩せた中年マウス」の表現に思わず笑ってしまう。しかし実は笑い事ではない。多くの人が今行っているのは、そのような食事法なのだ。

現代社会において人は長寿になりつつ少子化が進むメカニズムが解明されたようだ。

ここ何年かダイエットのために、低糖食を心がけてタンパク質を積極的に食べている。しかし、これはどうも間違いのようだ。タンパク質の量はむしろ少ない方が寿命のためには良い。タンパク質は食事の15から20%で十分で、糖質と脂質を適度にとりつつ、食物繊維をたくさん食べるのが良いようだ。

加工食品が体に良くないと言う事は、この本を読むまでもなく、明らかだ。だから、今まで通り食べない。

やはり印象に残った事は、粘菌から人まで多くの動物は、タンパク質を食べたくて食べていること。しかし南極でのウサギ肉ばかり食べて高タンパク質で人が死ぬ、ウサギ中毒の話など、タンパク質はの食べすぎは有害だと言うこと。我々の味覚は、必要なものを体に取り入れるために好んでそれを食べるように与えられていること。タンパク質を控えめにして、植物性の食物繊維の多い炭水化物をたくさん取らなければいけないことなど学んだ事は多く、読み物としてもあまりにも面白く一気に最後まで読んでしまった。

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