近頃のマーケティングの話題はZ世代とTikTokである。それが、マスメディアにも広がり、ウクライナと株価急落を除けば、世の中これだけで成り立っているような感じすらする。
日本でもアメリカでも、インターネット広告がテレビ広告を追い越して、マーケティングの中心になっている。インターネットのメディアも、今まで大量にテレビに投下されてきた広告費を奪うために、そのユーザーの増加を背景に、様々な広告プログラムを開発している。中でも、TikTokの急成長は著しい。
昨年、日経トレンディが「TikTok売れ」をヒット商品の1位に選んだように、TikTokで紹介された商品がよく売れると言う現象は日本でもアメリカでもたくさんの事例がある。これはTikTokのアルゴリズムで、特定の動画を「おすすめ」として紹介しそれが拡散するために起こると言われている。
このTikTok売れを、広告主向けの広告プログラムとして販売する新たな取り組みを発表した。
それは、TikTok Pulseと呼ばれる新しい広告プログラムだ。そTikTokに現れる動画の上位4%をPulseとして位置づけ、その動画と一緒に表示される広告を別途販売する。
そのプログラムによる広告費は、動画のクリエイターとTikTokが50% ・50%でシェアすると言う。このPulseのクリエイターに選ばれるためには、少なくとも100,000人のフォロワーを持ち、TikTokが承認したコンテンツを投稿している人に限られる。
Pulseに表示される動画は12のカテゴリーに分かれ、広告主は自社の関連するカテゴリーに広告を出稿できる。12のカテゴリーは、すべて発表されていないが、美容、ファッション、料理、ゲームは含まれていると言う。広告主が多い領域である。
TikTokのような投稿サイトでは、問題のある動画が投稿される可能性もある。不適切な動画に広告が表示されて、問題になったり、炎上したりすると言うようなケースも過去に起こっており、一部の広告主は、投稿サイトへの広告出稿をためらうケースも多い。このPulseにおいてはTikTokが事前に確認した動画のみ表示されるため、広告主にとって安全な動画に広告が表示される。このため、広告主にとっては安心できるプログラムである。投稿サイトに慎重な広告主を取り込む狙いがTikTokにあると思われる。
また、12のカテゴリー分けは、第三者クッキーによるターゲティングが難しくなっている中で注目をされている、「文脈ターゲティング」の考え方である。自社の商品と関係が深い分野の動画が表示されるところに広告が表示されるために、訴求力がある程度保障される。
既に同様の広告プログラムはMetaのFacebookでも行われている。Watchと言うビデオのカテゴリーでは、Facebookが事前に選んだコンテンツを表示するために、広告主はカテゴリーを選んで、広告を表示できることがすることができる。今回のTikTokのPulseもこれと同じ考え方である。
TikTokのバルスの動画クリエイターは50%の収益を受け取る。これはTikToにとっては、優良なコンテンツクリエイターを、TikTokに囲い込むための方法でもある。TikTok 、Facebook、 YouTubeなどソーシャル動画共有プラットフォームは自社でコンテンツを制作するわけではなく、コンテンツのクリエイターによって成り立っている。このために優良なコンテンツを制作するクリエイターを自社の囲い込むことも、広告費を集めるのと同様に重要なことだ。
TikTok Pulseは6月にアメリカから開始されることが発表されているが、日本での開始の時期については何の発表もない。だが、少し遅れて日本でも開始されることは間違いない。