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楽しみにしていたのだが、なかなか行けなかったクーデルカ展に日曜日の夕方に滑り込み。案外すいていて、やはり写真展は人気がないなと再確認。モネならひとが溢れているだろうが。
今回の展示はクーデルカの初期の作品から最近のものまで網羅されていて満足感が高いものだった。前回、東京都写真美術館で展示された「侵攻」は点数が抑えめでほかのシリーズの作品が多くて良かった。特に初期のプラハで撮られたものは今までに写真集でも見ていなかった、全くの初めてのものばかりで感激した。
「ジプシー」とか「Exiles」とか代表作がかなりの点数で展示されていて、クーデルカらしい暗めの粒状感たっぷりの写真を堪能した。最近悩んでいる印画紙のサイズは多分、大全紙ほどもあって大きさも重要だと思う。
最初に若い時の写真がセピア色になって展示されているが、これがまさに好み。構図と言うか撮った対象というかまさにツボ。さらに実験的な作品で、これがまたすごい。ジャコメッリのように中間を飛ばした白と黒の二諧調で作られたものが多い。特に好きなのは、絞りを開放しにして逆光でピントを外した(と思う)何点かの作品。
続いて「ジプシー」が圧倒的な枚数とサイズで展示されている。小さな写真集で見ていたのとは違うものだ。ロマ(ジプシー)の生活や内面まで入り込んで撮られた作品で見ていて飽きない重さがある。続いて演劇の写真で「Exiles」と続く。ただ、個人的な好みでは前からそうだが、「Exiles」が一番好きだ。
「ジプシー」や「侵攻」はジャーナリスティックで興味深いのだが、作品としては「Exiles」がより深い意味が感じられる。特に撮られた時期が、ソ連を中心とするワルシャワ条約軍がプラハの春を戦車で押しつぶして、クーデルカは「侵攻」を匿名で発表した後、西側に亡命して無国籍者としてヨーロッパの国々の写真を撮って歩いたということを知っているので、その一枚一枚に家族を祖国に残して亡命した無国籍者としての彼の思いが写っているようにも見えるのだ。
最近のシリーズという「カオス」は初めて見たが、すべてパノラマ写真ということで、写真の濃度や粒状感などまったくクーデルカ調だ。写真としては撮った被写体の迫力やサイズも含めて圧倒的な存在感があるのだが、横長のイメージになじめずにパノラマでなければと思いながら見ていた。それぞれとても好きなのだが、アスペクト比だけが最後まで違和感を感じてしまった。これも自分の偏狭な固定観念のためだと思うが、楽しめないのは仕方ない。
常設展にも写真が展示されていて、森山大道やベッヒャーを見て、クーデルカ展の図録を買ってかえってきた。これがなかなか良くて帰ってからもずっと見ていた。閉館で外に出るとと冬の陽はすっかり落ちて暗くなっていた。