セバスチャン・サルガド

by Shogo

写真家セバスチャン・サルガドが亡くなった。マラリアに罹患して以来、健康問題を抱えていたとのことだ。あの作品を撮影するために、未開の原野に分け入っただろうから、そういうリスクもあったのだろう。

セバスチャン・サルガドの写真展には東京とロンドンで見たことがあった。特に後で見たロンドンでの写真展、「ジェネシス」の印象は今でも強く残っている。と言っても、もう10年以上も前のことだ。最初はあまり好きでなかったのだが、東京都写真美術館で実際にプリントを見た後からファンになっていた。それで、たまたまロンドンに長く滞在していた頃に「ジェネシス」の情報を見て出かけたのだった。

32カ国で撮影されたという多数の作品が、ロンドンの自然史博物館で公開された 。サルガドの作品は、一目見て彼のものであるとわかる、美しいプリントが特徴的だった。その印象は、作品数も多く圧倒的されたことを今でも強く残っている。

「ジェネシス」というタイトルが示す通り、この作品は、かつての地球、手つかずの風景、野生動物、そして遠隔地の共同体を捉えていた。他の作品のように環境破壊に焦点を当てるのではなく、自然の美しさに焦点を当てているように感じた。

彼の他の作品、「ワーカーズ」と「マイグレーションズ」は、自然と人間活動の結果による環境破壊を主題としていた 。しかし、「ジェネシス」は、まだ残っている自然や生活を意識して撮影されたようだ。

サルガドの作品は、人間と自然を、写真というメディアの通じて考察する視点を持っている。単なる記録ではなく、良い芸術作品がそうであるように見る者に問いかけ、行動を促す力を持っている。その力は、そのイメージがモノクロだということも影響しているように思える。

サルガドが徹底してモノクロ写真にこだわり続けた姿勢は、彼の作品の力強さと密接に結びついている。色彩という情報を排することで、彼は光と影、そして質感の描写を極限まで追求した。その結果、彼のプリントは、被写体の生命力や存在感を際立たせ、見る者の心に深く訴えかける。

モノクローム写真は、主題の本質を抽出し、時代や文化を超えた普遍性を獲得するための手法だ。サルガドは、写真の持つモノクロームの力を最大限に引き出すためにプリントには徹底的に拘ったのだろう。その結果が、強い訴える力を持ち、かつ見飽きない美しさを持っているプリントだ。

サルガドは、写真というメディアを通して、人間、社会、自然、歴史といった普遍的なテーマを探求してきた。彼の作品は、残された私達が地球との関係を再考し、より調和の取れた環境を残せという強いメッセージを投げ続けるだろう。

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