新しいスポーツビジネスモデル

by Shogo

ビジネスにおいて、革命的なアイディアを考えて実行に移す人はいるものだ。ドイツのサッカー2部リーグのフォルトゥナ・デュッセルドルフは、来シーズンのいくつかの試合で、54,600人収容のメルクールシュピール・アリーナで行われる3試合のチケットを無料で配布することを決めた。割引とか一部の招待でなく、完全に全席無料とするのである。これは近代スポーツビジネスにして、今まで誰も行わなかったことだ。

そもそも、スポーツビジネスは、最初は入場料収入から始まり、長くそれが続いた。テレビやラジオの放送が始まり、放送権の概念が生まれ、それとほぼ同時にスポンサーシップのビジネスも加わった。さらに発展して、今はチームの知的所有権のマーチャンダイジングや、豪華な食事と観客席でお客をもてなしたいと考える企業や個人向けのホスピタリティーチケットの販売なども登場している。しかし、前提としてはチケットが基本的な収入として考えられてきた。

しかもフォルトゥナ・デュッセルドルフは、今は第二部に落ちているが、かつてはブンデスリーガに所属した中堅クラブである。さらに、デュッセルドルフは、ドイツの中でも、多くの企業が集まる、裕福な街でもある。そこでプロのサッカーチームのチケットを無料にすると言うのであるから、これは破壊的な発想だ。

フォルトゥナ・デュッセルドルフは、今は2部リーグに落ちているため、一試合の平均観客動員数は29,000人で、年間のチケット収入は800万ユーロに落ちてしまっているそうだ。この800万ユーロは現在の総収入の20%を占めてと言う。減ったとは言え、かなりの収入であることは間違いではない。

フォルトゥナ・デュッセルドルフが来シーズンで計画しているのは、無料チケットの試合が3試合だと言う。当然、その3試合については収入源になるために、この無料試合についてのパートナーを募集して、そのスポンサーシップの収入をチケットの不足分に充当することが1つ、さらにこの3試合が平均観客動員数の29,000人よりも多くの観客を集め、その観客の飲食代、チームのグッズを購入することにより、多くの売り上げを上げることを期待している。また、間接的には、無料試合体験で他の試合の観客増のプロモーションとしても意図があるのかもしれない。

この実験の結果がどうなるのだろうか。一般的に言って、無料なものに価値は無いから無料にすることによって人気がなくなる事も考えられる。しかし、現時点では年間に3試合のみなので、サッカーにあまり興味がない人の無料体験として集め、プロモーション的な役割を果たすことで成功するのかもしれない。

さらに考えると、実験としてすべての試合を無料にすることも考えられないわけではない。そして収入は放送権、スポンサーシップ、マーチャンダイジング、飲食などのスタジアム内の消費で賄うと言う考えだ。

これも同様に無料のものに価値はないと考えられるが、満員のスタジアムになり、チケット収入分を補う得る可能性もないわけではない。このフォルトゥナ・デュッセルドルフの実験がどのようになるのか興味がある。現時点では年間たった3試合なので、単なるプロモーション的な試みにしか過ぎないが、この試合数を増やしていけば、スポーツビジネスの新しいビジネスモデルの発見につながる可能性もないわけではない。

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