角川グループのサイバー攻撃が話題になっている。ニコニコ動画は、使っていないから個人的には影響はないが、多くの人が困っているようだ。また25万人の個人情報が流出したそうだから、角川にとっては大変なことだ。
だが、これは、どの企業にも起こり得る。特にリモートワークを実現しているコラボレーションツールのSlackのようなメッセージングアプリ、Trelloのようなプロジェクト管理ソフトウェア、Zoomのようなビデオ会議ソリューションなどがサイバー攻撃のターゲットになっていると言う記事を読んだ。
フォーチュン・ビジネス・インサイツの報告によれば、2023年の世界のコラボレーションソフトウェア市場は217.9億ドルに達し、2024年には246.3億ドル、2032年には603.8億ドルに成長すると予測されている。パンデミックで一挙に普及が進んでいるようだ。
ハッカーは、これらのコラボレーションツールを利用して企業のデータにアクセスしようとしているそうだ。ハッカーが企業のコラボレーションツールを攻撃するための7つの方法が挙げられていた。
1. ソーシャルエンジニアリング
ハッカーは、従業員を騙して機密情報を引き出したり、危険なリンクをクリックさせたりする手法を使う。信頼できる人物になりすまして、メールや電話、さらには直接対話で接触し、従業員から情報を得ることがある。特に、コラボレーションツールは情報共有の場であるため、これらの手口のターゲットとなりやすい。
対策として、従業員には予期せぬメッセージや、即時に行動を要求するメッセージに対して警戒するように教育することが重要。
2. マルウェア攻撃
SlackやMicrosoft Teams、Zoomなどのコラボレーションソフトウェアは、ファイルやリンクの共有が頻繁に行われるため、マルウェア攻撃の対象となりやすい。ハッカーは、ファイルやリンクにマルウェアを仕込むことで、ユーザーのデバイスに感染させ、ネットワーク全体に広げることができる。
これを防ぐためには、ソフトウェアの最新状態の維持、フィッシングの認識教育、アクセス制御の徹底が必要。
3. 弱いパスワード
弱いパスワードは、ブルートフォース攻撃や他のサイトから流出したパスワードを使った攻撃のリスクを高める。特に、多要素認証(MFA)がない場合、一つの弱いパスワードでハッカーがネットワークに侵入することができる。
ブルートフォース攻撃(Brute-force attack)とは、「総当たり攻撃」とも呼ばれるサイバー攻撃の一種。この攻撃では、パスワードを解読するために、考えられるすべての組み合わせを片っ端から試すことだ。
企業は、強力なパスワードポリシーの実施、定期的なパスワード変更の推奨、優れたパスワードマネージャーの利用、MFAの実装、従業員へのサイバーセキュリティ教育を行うべき。
4. ソフトウェアの脆弱性の悪用
コラボレーションツール自体のソフトウェアの脆弱性を悪用されることもある。特に、古いバージョンのソフトウェアや未パッチのセキュリティフローは、ハッカーがシステムやデータに不正アクセスする手段となる。また、一部のコラボレーションツールには、デフォルト設定の弱さや不適切なデータ暗号化、アクセス制御の不備があることがあるという。
これらのリスクを軽減するためには、ソフトウェアの定期的なアップデートとパッチ適用、デフォルト設定の強化、適切な暗号化とアクセス制御の実施が必要。
5. 中間者攻撃(Man-in-the-Middle攻撃)
ハッカーは、偽のWi-Fiホットスポットを設置し、チームの会話を盗聴したり、機密情報を盗んだり、共有データを操作したりする中間者攻撃を行う。これにより、データ漏洩や不正アクセスが発生する可能性がある。
このような攻撃を防ぐためには、VPNの使用や、通信を暗号化するプロトコル(HTTPSなど)の利用が効果的。
6. サプライチェーン攻撃
プロジェクト管理ソフトウェアやメッセージングプラットフォームなどのコラボレーションツールを介して、サプライチェーン攻撃が行われることがある。これらのツールは、サードパーティベンダーのシステムと連携しており、多くの機密情報を保持している。ハッカーがこれらのツールの脆弱性を突くことで、企業のネットワーク全体に侵入することができる。
対策としては、サードパーティアプリのセキュリティとプライバシーの評価、定期的なセキュリティチェック、権限の制限が必要。
7. ゼロデイ攻撃
ハッカーは、ソフトウェアの隠れた脆弱性を利用して、企業のコラボレーションツールを攻撃する。ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアの開発者が知らないセキュリティ問題をハッカーが見つけ、それを修正する前に攻撃を仕掛けることだ。これにより、企業のシステムに不正アクセスし、情報を盗んだり、マルウェアを拡散させたりすることができる。
ゼロデイ攻撃を防ぐためには、最新のセキュリティパッチの適用、侵入検知・防止システムの導入、定期的なセキュリティ評価が重要。
このようなサイバー攻撃に対して、対策が紹介されていた。それは、以下のような複数の方法を組み合わせて対策を講じることだそうだ。かなり数があるが転記しておく。
- データの暗号化:強力なアルゴリズムを用いて、コラボレーションプラットフォームに保存されているデータを暗号化する。
- 安全なプロトコルの利用:デバイスとコラボレーションソフトウェア間のデータ転送にはHTTPSなどのプロトコルを使用する。
- アクセス制御:特定のファイルやフォルダにアクセス、編集、共有できるユーザーを識別する。
- リンクの有効期限設定:共有リンクに有効期限を設定し、アクセスを制限する。
- 機密情報のマーキング:機密または専有のドキュメントにマーキングを追加し、その使用を追跡する。
- アクセス権限の見直し:定期的に、誰が機密データにアクセスできるかを確認し、不必要な権限を削除する。
- ユーザー行動の監視:潜在的な脅威や不審な行動を特定するために、ユーザーの活動を継続的に追跡する。
- サードパーティアプリの評価:統合する前に、サードパーティアプリのセキュリティとプライバシーの実践を評価する。
- 多要素認証の利用:追加のセキュリティとして、多要素認証を使用する。
- コラボレーションツールの定期的なチェック:脆弱性を確認するために、コラボレーションツールを定期的にチェックする。
- 最新のセキュリティパッチの適用:コラボレーションツールを最新のセキュリティパッチで更新する。
- データ損失防止ソリューションの使用:機密情報を保護するために、データ損失防止ソリューションを使用する。
- 侵入検知・防止システムの導入:不正アクセスを検知し、防止するためのシステムを導入する。
- 強力なメールフィルターの使用:フィッシング攻撃や有害な添付ファイルをブロックするために、強力なメールフィルターを使用する。
- サードパーティアプリの権限制限:サードパーティアプリに与える権限を制限する。
- デバイスのセキュリティ対策:コラボレーションソフトウェアにアクセスするデバイスには、ウイルス対策、ファイアウォールなどのセキュリティ対策を実施する。
- リモートワイプ機能の実装:紛失または盗難に遭ったデバイスのデータを遠隔で消去できるようにする。
- VPNの使用:リモートでコラボレーションツールにアクセスする際には、VPNや他の安全なプロトコルを使用する。
- デバイスの認証:ネットワークにアクセスするデバイスを認証し、許可された安全なデバイスのみがアクセスできるようにする。
- データのスキャン:機密情報をスキャンし、適切な権限を持たない人がアクセス、共有、削除できないようにする。
- データの分類:データを機密度に応じて分類し、適切なセキュリティ対策を適用する。
便利に働くためのコラボレーションツールが狙われるというのは残念なことだが、多くの人が参加して働くことができることは、それだけリスクも高いということだろう。企業がこれらのツールを安全に利用するためには、複数のセキュリティ対策を組み合わせて実施することが重要なようだ。