AIを活用した検索エンジンの市場が急速に拡大し、私たちの情報収集方法を変えつつある。
従来の「検索=Google」という常識が崩れつつあり、ChatGPTをはじめとするAI検索ツールが台頭してきている。米ガートナーの最新予測によると、2025年の世界における生成AI支出総額は前年比76.4%増となる6440億ドルに達する見込みだ。この急成長は全セグメントで見られるが、特にサーバー、スマホ、PCなどのハードウェア/デバイスへのAI機能搭載が加速しており、これらが支出全体の約8割を占めると予測されている。
特にAI検索エンジン市場に焦点を当てると、2025年の43.63億ドルから2032年には108.88億ドルへと成長し、年平均成長率14.1%で拡大する見通しだ。Web検索セグメントが市場全体の61.7%を占め、ユーザーの日常タスクにおける検索エンジン依存度の高まりを反映している。
ChatGPTとAI検索の台頭
最も注目すべきは、ChatGPTの急速な普及だ。最近のレポートによると、ChatGPTの月間使用量が40億訪問を超え、Google Chromeと肩を並べる規模にまで成長していることが明らかになった。
特にEU圏内では、ChatGPTの検索機能「ChatGPT search」の普及が著しく、2024年10月末までの6か月間で約1,120万人だった月間アクティブユーザー数が、2025年3月31日までの6か月間では約4,130万人にまで急増している。この数字は、EUのデジタルサービス法(DSA)が「非常に大規模」と定義する4,500万人の閾値に迫る勢いだ。
9月に発表された調査によると、すでに8%のアメリカの人々がGoogle検索よりもChatGPTを主要検索エンジンとして選ぶと回答している。ただし、依然としてGoogleは圧倒的な検索量を誇り、ChatGPTの約373倍の検索を処理していると推定されている。
大規模言語生成AIサービス(LLM)のシェアについては、調査会社のCoherentが発表しており、やはりChatGPTが圧倒的なシェアを持っている。最初の登場のインパクトが大きく、AIと言えばChatGPTとなっているからだろう。
2025年4月時点で、ChatGPTが59.7%のシェアを占めている 。週間アクティブユーザー数は4億人に達し、世界で8番目に訪問者数の多いウェブサイトとなるなど、その影響力は絶大だ 。一方で、年間50億ドルという莫大な運用コストがかかるものの、2024年には10億ドルの収益を上げている 。
主要な競合としては、Microsoft Copilot(14.4%)、Google Gemini(13.5%)が追随している 。MicrosoftはBing ChatをCopilotにリブランドし、競争力を高めようとしている 。
さらに、精度重視のPerplexity(シェア6.2%、四半期成長率10%)やビジネス利用に特化したClaude AI(シェア3.2%、同14%)といったベンチャーも急成長している 。特にPerplexityは、現在の収益(2024年10月時点で年換算5000万ドル)はまだ小さいものの、9億1500万ドルの資金調達と約90億ドルという高い評価額を得ており、投資家の期待の高さがうかがえる。
順位 | 名称 | 市場シェア (%) | 主な特徴/焦点 |
1 | ChatGPT | 59.70% | 汎用AIチャットボット |
2 | Microsoft Copilot | 14.40% | 汎用AIアシスタント (GPT-4ベース) |
3 | Google Gemini | 13.50% | 汎用AIアシスタント |
4 | Perplexity | 6.20% | 精度重視のAI検索エンジン |
5 | Claude AI | 3.20% | ビジネス重視のAIアシスタント |
大規模言語生成AIモデル(LLM)の利用目的については、Precedenceの資料によれば、やはり、文章生成や翻訳、要約の純粋生成が80-85%と中心だが、検索も15-20%を占める。
検索連動型 | 15-20% | リアルタイム情報取得、事実確認 | RAG技術の進化 |
純粋生成型 | 80-85% | コンテンツ作成、翻訳、要約 | 業務自動化需要の高まり |
*RAGは、Retrieval Augmented Generationの略で、日本語では「検索拡張生成」と訳される。これは、大規模言語生成AIモデル(LLM)が、外部の知識ベースから関連情報を取得し、その情報を基に回答を生成する技術
AI検索の信頼性と課題
急速に普及するAI検索だが、その信頼性については未だ課題が残されている。米コロンビア大学ジャーナリズム大学院の研究によると、AI検索ツールは引用元や引用文を捏造するだけでなく、記事の配信元へのトラフィックを遮断してしまう問題が判明している。
この研究では8つの大規模言語モデル(LLM)を比較評価し、配信元20社から無作為に選んだ記事を基に計1600回のクエリ結果を手作業で評価した。結果として、最も正確な回答を示したのはPerplexityとPerplexity Proであり、一方Grok-2、Grok-3、Geminiは正しい回答をほとんど提示できなかったとされている。
普段からPerplexityを一番良く使うのは、出典が表示されるので安心できるのだが、ChatGPTやGeminiなどについては、ハルシネーションが怖くて検索に使う気がしない。
AI検索時代のマーケティング戦略
ChatGPTなどのAI検索の台頭により、企業のマーケティング戦略も変化が求められている。従来のGoogle SEO対策だけでなく、AI検索に最適化したアプローチが必要になってきている。具体的には以下のような対策が重要だ。
- ChatGPTに正確な企業情報を届ける 公式連携されているプラットフォームでの情報管理を強化し、Googleビジネスプロフィール、Apple Maps、Bing、各種SNSの情報を最適化する。
- AI検索に最適化したコンテンツを作成 ChatGPTは「具体的な質問→明確な回答」を提供するため、質問形式の記事やFAQページを強化する。AIが解析しやすい文章構成で情報を提供する。
- 検索情報の一元管理 Google検索、AI検索、SNSを横断して情報を管理・更新できるツールを活用することで、AI検索時代に適応する情報最適化を行う。
このように、AI検索エンジン市場は急速な成長を続け、情報収集の方法に変化をもたらしている。ChatGPTを中心としたAI検索ツールはGoogleの牙城に挑戦し始め、ユーザーの情報アクセス方法を変えつつあることは疑いがない。
しかし、情報の正確性や引用の信頼性など、解決すべき課題も残されている。また、急速な技術革新に法規制が追いつけていない面もあり、問題になっている著作権問題など、今後の規制動向も注視する必要があるだろう。
企業にとっては、GoogleとAI検索の両方に対応した二軸のアプローチが必須となっており、情報発信やマーケティング戦略の見直しが急務だ。