ヴォルフガング・ティルマンスの、初となる大規模な回顧展が9月12日から2023年の1月1日までニューヨーク近代美術館で開催される。タイトルは、「To Look Without Fear」。この展示は新型コロナウィルス感染症のために1年半延期されていた。見に行ってみたいものだが、まだこの時期に海外旅行は少し難しそうだ。
ティルマンスを初めて見たのは、コンコルドを撮った写真集だった。単にコンコルドと言う、消えていくテクノロジーのノスタルジーを撮っただけと思えたが、何度も見ていくうちにコンコルドよりも、むしろその風景や写真の撮り方により興味を惹かれていった。
その後、2004年に東京オペラシティで開かれた個展では、まるでインスタレーションのように無造作に壁に貼られていた展示方法を見て、従来の写真の展示方法を破壊するようなことだけを考えているのかと思ったものだ。そうではなくて綿密に計算されて展示されていることを少し引いて壁全体を見るとわかるようになっていた。
今回のMOMAの展示でも展示されるTruth Study Centerの展示は、もはや壁を使わない。テーブルの上に写真、新聞、雑誌など様々なものを並べての展示になっている。この方法はすでに、Truth Study Center のシリーズでは10年以上にわたって行っている方法だ。
写真の展示と言えば額装された写真が壁に横1列に並んでいるイメージだが、ティルマンスの場合にはむしろそのような展示の方が少ない。
日本国内では、東京オペラシティの以降でも、2015年に大阪で個展が行われ、2020年にもコロナウィルスの最中に東京でも展示が行われた。だが、どちらも行っていない。だから彼の最新の展示を見てみたいのだが。今回のMOMAの回顧展と同じような展示が、もう一度行われると思えないが、彼の人気を考えると近い将来東京でも、「To Look Without Fear」の個展が開かれる可能性は高いのでそれを待ちたいと思う。
今回の回顧展では、ネットの記事で見ていた印画紙に懐中電灯を使って感光した作品や、BLM支持や極右への反対表明の作品も含まれている。とりあえず、MOMAの今回の展示の図録だけでも注文し用としているが、買い物カゴに入らない。買えたら、それを見ながら、ニューヨークを想像しよう。