FIFAワールドカップを見ていると(これを書いている間もハイライトを見ているが)VISAの広告を見る度に、昔はMastercardだったことを思い出す。FIFAワールドカップの支払い・決済のカテゴリーのスポンサーは2010年大会からVISAに代わっている。この時にはMastercardがFIFAを訴えて最終的には和解している。契約更改交渉の過程で行き違いがあり、それに乗じてVISAが権利を獲得したのだろう。あれ以来、メガ・スポーツイベントのスポンサーは、VISAが定着した。オリンピックとFIFAワールドカップのスポンサーだからだ。長い間続けたFIFAワールドカップを奪われたMastercardは、翌年の2011年からラグビーワールドカップのスポンサーになっている。
このスポーツイベントのスポンサーシップがどの程度効いているかわからないが、VISAは世界の電子決済で1位の地位をを占めている。対してMastercardはApple PayとAliPayに抜かれて4位となった。年間の決済金額でも、VISAが10兆ドルを超えているに対してApple PayとAliPayが6兆ドルで、対してMastercardは5兆ドルに達していない。VISAの半分以下である。
このランキングでは、Mastercardのすぐ下の5位にGoogle Payが入り、Amarican Expressは6位だ。7位以下もPayPal、Amazon Pay、Sumsung Payと続き、老舗のクレジットカード会社に対して新興の電子決済が急速に伸びていることがわかる。
個人的には新型コロナウィルスの問題は関係なく、以前より現金を触らないようにしている。買い物はクレジットカードだったが、小銭を使うような場合でも、以前はEdyや交通系カード、今はQRコード決済の利用が多い。
しかし一般的には、日本ではまだ電子決済はあまり進んでいない。経済産業省が発表した数字では2021年の電子決済比率は32.5%。世界では韓国が94.7%、中国は77.3%、カナダが62.0%など普及が進んでいる。
多少なりとも日本の電子決済の率が高まったのは政府のポイント還元をつけて普及を進めたためだ。しかし韓国が電子決済比率が高いのは、ポイント還元と言うような一時的な施策ではなく、思い切ったものだ。クレジットカードの利用額から20%の所得控除があったり、一定規模以上の店舗ではクレジットカード取り扱いの義務が課されている。そのような政策があるから、94.7%という高い数字になっている。
中国も電子決済比率が高いが、どちらの国も店舗の脱税防止と言う政府の政策の結果なのは事実だ。日本では、そのような観点から利用促進は進められていないが、コロナウィルス対策はもちろん、人手不足の中での店舗での省力化、現金管理のリスクの低減、インバウンドでの外国人観光客対応などメリットも大きい。
海外の状況を見ても、もう少し普及が住んでも良いかと思うが、治安の良さから現金を持ち歩く不安感もなく、中国のように偽札が流通する可能性も低く、コンビニなどで現金が入る引き出せるインフラが整っていることなどから、現金を好む人が多いのも事実だ。電子決済が進むことによる社会全体の効率化もあるため32.5%よりもう少し進んでも良いかと思う。
スマホで決済を行うために、リスクの問題を考える人もいるが、現金を落としても同じことなので、スマホだからリスクが高いと言う事はない。むしろ、財布は忘れて出かけても、スマホを忘れることはないので便利だ。
クレジットカード会社も、カードを使わない決済に進出している。だが、出遅れているのは事実だ。さらに、Apple PayやAliPayの普及が進んでくると、いつの日かFIFAワールドカップのスポンサーもApple Payになっているのかもしれない。