ニュースサイトを開くと、AIのニュースをみない日はない。今日読んだのは、2025年のIT支出は、AIとクラウドが牽引するという話だ。
S&P Global Ratingsのレポートの予測によると、2025年のIT支出は、AIとクラウドへの投資が牽引し、世界全体で9%増加するそうだ。AIの話は、当面終わりそうにない。ここが、地に足がついていなかったメタバースとは違っている。
レポートによると、主要クラウドプロバイダーであるAWS、Microsoft Azure、Google Cloud、そしてMetaは、AI投資を約3200億ドルにまで拡大しているが、一方で企業はAI導入に慎重な姿勢を示しているそうだ。S&Pのテクノロジーディレクターは、「企業は、ROIをもたらすユースケースを模索している段階です。説明可能性、セキュリティ、法的リスクが依然として主要な課題となっています」と指摘している。やはり、AIは企業が実用化するまでには、まだ課題があるということだ。
レポートでは、企業が「より慎重な道」を歩む中で、AIの広範な実装に向けた分野を慎重に選択していることが示されている。この慎重なアプローチは、ベンダーの細分化、AI人材の不足、確立されたベストプラクティスの欠如、そして新たな法的・コンプライアンスリスクといった課題を反映している。それでも、昨年のIT支出は8.3%増加しており、この傾向は2025年も継続され、9%増加の成長の見込みだ。
ROIの検証が求められる中、中国のAIスタートアップDeepSeekが、ウォール街とシリコンバレーを驚かせる成果を上げた。彼らは、わずか560万ドルの費用と2,048個の旧世代Nvidia AIチップを使用して、ChatGPTなどの米国最高峰のモデルに匹敵する性能を持つAI基盤モデルを開発した。
これは、米国のAI開発企業が大規模言語モデルの開発に数億ドルを費やし、数万個もの最新鋭Nvidia AIチップを使用している状況とは対照的だ。さらに、DeepSeekのAIモデルはオープンソースであり、無料で利用・改訂できる。OpenAI、Google、AWSといった主要な米国AI企業は、Metaを除き、ほとんどのAIモデルへのアクセスを有料で提供している。DeepSeekの推論コスト(モデルの実際の利用にかかる費用)も、米国のトップAI企業よりも大幅に低い。
しかし、S&P Global RatingsはDeepSeekのコスト削減が企業に直接的な利益をもたらすとは断言していない。DeepSeekの「画期的な成果は、より効率的なAIモデルのトレーニングと展開への移行を示しており、AIモデルへのアクセスコストを削減し、収益を改善して導入を加速させる可能性があります」と述べている。だが、AIのコストが安くなっても、すぐに実装にはつながらないだろう。
今は、DeepSeekのR1推論モデルは、主要な3つのクラウドプロバイダーのプラットフォームで提供されているが、一部の国や州では政府職員による使用が禁止されている。この状況では、企業が採用するのは難しいかもしれない。
OpenAIは、今後のAI投資を前提にSoftBank、Oracle、MGXと提携し、「スターゲイト」と呼ばれるプロジェクトで、主にデータセンターで構成されるAIインフラに1,000億ドルから5,000億ドルを投資する計画だ。これが、フル稼働するためには、コストもそうだが、信頼性。倫理性などの課題も多い。
また、S&PのIT支出予測は、トランプ政権の関税政策の結果によって変化する可能性がある。S&Pは、「貿易政策は、IT支出予測の重要なリスクです」と述べているからだ。一方、S&Pは、トランプ関税を回避しようとする顧客の動きもあり、PCなどのハードウェアの購入が加速しているとも述べている。2月4日には、中国からの輸入品に対する追加の10%関税が発効した。駆け込み需要が生まれているということのようだ。
S&Pは、企業が老朽化したコンピューターを更新し、Microsoftが10月にWindows 10のサポートを終了することから、2025年のPC販売台数が2024年の1%増から3%増に増加すると予想している。
しかし、AIはPCやスマートフォンの販売を促進する要因にはなっていないとS&Pは指摘している。今年のスマートフォン販売は、AI機能を追加しても苦戦するとS&Pは予想している。「多くのフラッグシップスマートフォンに新しいAI機能が導入されたにもかかわらず、消費者の需要は比較的低迷しています」という状況だそうだ。Apple Intelligenceにも関わらず、Appleの株価にも影響が出そうだ。