毎年発表される世界幸福度報告書で、日本の幸福度ランキングは、2024年は51位であった。これは前年2023年の47位から4つ順位を下げる結果だ。そして、日本はG7の中で最下位という位置づけが続いている。
世界幸福度報告書は、国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)が2012年から毎年(2014年を除く)発表している国際的な調査レポートだ。この調査は米調査会社ギャラップが世界各国で実施する世論調査をもとにしており、各国約1000人の回答者に現在の生活満足度を0から10のスケールで自己評価してもらい、「幸福度」を測定している。
最終的なランキングは、直近3年間(今回は2022年から2024年)の平均評価に基づいて作成され、以下の要素が考慮される。
- 一人当たりGDP
- 健康的な平均寿命
- 社会的支援(困ったときに助けてくれる友達・親族がいるか)
- 人生の選択の自由
- 寛大さ(寄付や他者への援助)
- 腐敗の認識
2025年世界幸福度ランキングの結果
2025年の世界幸福度ランキングでは、フィンランドが8年連続で1位を獲得しました。上位10カ国は以下の通り。
- フィンランド
- デンマーク
- アイスランド
- スウェーデン
- オランダ
- コスタリカ
- ノルウェー
- イスラエル
- ルクセンブルク
- メキシコ
特筆すべきは、上位5か国中4か国が北欧諸国であること、そしてコスタリカとメキシコが初めてトップ10入りを果たしたことだ。これらの国々は、強力な福祉制度、教育システム、社会的支援ネットワークを持つことが共通点として挙げられる。
日本と他のG7諸国
G7諸国の順位を見ると、カナダ(18位)、ドイツ(22位)、イギリス(23位)、アメリカ(24位)、フランス(33位)、イタリア(40位)、そして日本(55位)となっており、日本はG7の中で最も低い位置にある。
アジア諸国の中では、台湾(27位)、シンガポール(34位)が比較的高い順位にある一方、韓国(58位)や中国(68位)は日本より低い順位となっている。
日本は経済的には豊かな国であるにも関わらず、なぜ日本の主観的な幸福度は他のG7諸国に比べて低いのだろうか。その背景には、いくつかの複合的な要因が考えられる。
1. 低い「人生の選択の自由度」
報告書の評価項目の中で、日本がG7他国と比較して特に低い評価を受ける傾向にあるのが「人生の選択の自由度」である。「自分の人生で何をするか、自由に選択できていると感じるか」という問いに対して、肯定的な回答が少ない。これは、画一的なキャリアパスを重視する傾向、周囲の期待や社会規範への同調圧力、多様な生き方に対する許容度の低さなどが背景にあると考えられる。他のG7諸国と比較して、個人が自らの意志で人生を設計し、それを社会が後押しする、あるいは許容するという感覚が、日本では相対的に希薄である可能性が示唆される。
2. 際立つ「寛容さ(Generosity)」の低さ
他者への貢献意欲や行動を示す「寛容さ」の指標(例:慈善活動への寄付)も、日本がG7内で際立って低い項目である。2024年のデータでは、この項目における日本の順位は世界全体でも非常に低い水準であった。これは、個人の行動様式だけでなく、社会全体として見知らぬ他者への関心や支援、相互扶助の精神が、他のG7諸国ほど文化として根付いていないことの表れとも考えられる。PDF資料でも触れられている「思いやり」や「分かち合い」の実践が、社会全体で見るとまだ十分ではないのかもしれない。
3. 若者の幸福度の低さと顕著な世代間ギャップ
2024年版報告書は、多くの国で若者の幸福度が低下傾向にあることを指摘しているが、日本においては特にその傾向が顕著である。日本の30歳未満の若者の幸福度順位(73位)は、国全体の順位(51位)や60歳以上の高齢者の順位(36位)よりも大幅に低い。これはG7の中でも特徴的なパターンであり、若者が将来への希望を持ちにくかったり、社会参加や自己実現の機会が限られていると感じていたりする可能性を示している。世代間の価値観の断絶や、若者世代が直面する経済的・社会的な不安定さが、他のG7諸国よりも深刻である可能性も考えられる。
4. 経済的な豊かさと幸福感のギャップ(幸福度のパラドクス)
日本の一人当たりGDPはG7諸国の中でも低くはない。しかし、その経済的な豊かさが、必ずしも人々の主観的な幸福感に結びついていない。この「幸福度のパラドクス」が、G7の中で日本が最下位である大きな理由の一つである。長時間労働、精神的なストレスの多さ、職場や地域における人間関係の希薄さなどが、物質的な豊かさだけでは満たされない幸福感の欠如につながっている可能性がある。他のG7諸国では、ワークライフバランスの重視や、休暇の取得しやすさなどが、経済レベルとは別の次元で幸福度を高めている場合がある。
5. 社会的つながりの質と孤立感
社会的支援(困ったときに頼れる人の存在)のスコア自体は悪くないものの、その「質」や「深さ」において、他のG7諸国との違いがある可能性も考えられる。都市化や核家族化が進み、地域コミュニティのつながりが希薄になる中で、孤独感や社会的孤立を感じる人が増えていることが指摘されている。資料が示すように、「食事を共にする」といった日常的な分かち合いの機会が減少していることも、幸福感を低下させる要因となりうるだろう。
これらの要因、「人生の選択の自由度の低さ」、「寛容さの欠如」、「若者の閉塞感」、「経済成長と幸福感の乖離」、そして「社会的つながりの希薄化」が相互に影響し合い、日本の幸福度をG7の中で相対的に低い水準に留めていると考えられる。
これが、日本人の自己評価の結果ということを考えると、幸福度が低いことは実態を反映しているということで、日本の悲惨かつ悲しい状況を伺える。