世界中でインターネット企業への逆風が吹いている。
中国政府は、Alibabaに対して3,000億円の罰金を科し、関連の金融会社のアント・グループの業務内容を見直すように求めた。
オーストラリアでは、GoogleとFacebookにニュース使用の代金を支払う法律を通過させている。
イギリスは、テクノロジー産業の規制を行う政府機関の設置を決めた。
ロシアは、Twitterの帯域を規制して、アクセスの制限を開始した。
ミャンマーとカンボジアは、広範囲のインターネット制限を実施している。
欧州委員会は、AIを利用する技術の利用について規制する計画を発表した。
アメリカでは、Amazon、Facebook、Googleに対して、独占禁止法の適用の動きを見せている。
このような動きが、なぜ各国で始まっているかが、指摘されている。理由は、国によって異なっている。アメリカやヨーロッパでは、巨大IT企業による自由競争の妨害、偽情報の流布、プライバシー侵害の可能性が理由となっている。。ロシアでは、政治的な理由でインターネットによる自由な言論を押さえ込もうとしている。そして中国の場合は、両方だ。独占を抑え、言論をコントロールする目的があるという。
本来インターネットは、グローバルな自由なネットワークだ。World Wide WebやHyper Textなど必要な要件を満たせば、誰でも、どこでも、何でも発信できることができるネットワークとして発展してきた。それが、各国政府が規制しようとしているのは、Google、 Facebook、AlibabaなどのIT企業が巨大化し、大きな力を持つようになったからだ。GAFA, BATなどの10大IT企業の時価総額は、1,000兆円にも達している。東証1部の合計の時価総額が700兆円程度なので、それをはるかに上回ることになる。
このように、インターネット企業が巨大化したのは、インターネットが世界中をカバーし、さらに1人勝ちを産みやすいインターネットビジネスの性質があるからだ。
一方では、それはまたユーザ側の利便性ももたらしている。かつては高い郵便料金や電話料金を払って、世界各地の通信を行ったものが今はほとんど無料で行うことができる。様々なサービスを指先で簡単に受けられる。これにより個人や企業も大きな恩恵を受けている。
グローバルのインターネットというネットワークが、各国それぞれの規制が行われるようになると、グローバルと言う機能が失われる。これは、何としても避けたい。
アメリカでは政権になって、FacebookやGoogleといった巨大企業に対して企業分割と言う意見が出始めている。このような政策は、簡単にするものでもない。少なくともアメリカでは、仮にそのような政策が実行にうつされても、何年もかかる裁判を行うことになるだろう。
このような形の逆風を受けて、アメリカの巨大インターネット企業は自主規制と言う形で、プライバシー保護やコンテンツについての自主的な審査を強化し始めている。
World Wide WebやHyper Textが発明されて30年、インターネットの普及が始まって25年、まだまだ進化の過程にあるので、これからも様々なことが起こるのだろう。