スポンサーシップの1業種1社制

by Shogo

アメリカでは、圧倒的に高い人気のアメリカンフットボールは別にして、野球は、若い視聴者をバスケットボールやホッケーに奪われて、人気に陰りが出てきている。とは言え、国民の娯楽としての地位は揺らいでいないようだ。フォーブスがMLBのチームの価値を20.7億ドルと評価した。これは昨年に比べて9%の上昇である。その理由はポストシーズンの拡大とユニフォーム広告の解禁であると言う。

スポンサーシップでも動きがあり、1994年に設立された比較的新しい銀行のCapital OneがMLBのスポンサーとなり、「オフィシャル銀行&クレジットカードパートナー」の称号を使うこととなった。CNBによると契約金は5年契約の1億2500万ドルだ。1年あたり2,500万ドル、約30億円。これは昨年までの銀行カテゴリーのスポンサーのBank of Americaの1,000万ドルよりもはるかに高い。

どちらの契約も詳細もわからないが、Capital Oneの契約にはMLB自体のスポンサー以外に、30チームのスポンサーシップも含まれていることも理由の1つだろう。また、Capital Oneの契約には、ワールドシリーズの冠スポンサー権、オールスターゲームの際のCapital Oneカード保有者へのメリット提供、マイナーリーグやリトルリーグでのスポンサーシップも含まれており、これが契約金を引き上げている理由だと思われる。

Capital Oneが、このような高い契約金を支払って、MLBのスポンサーになったのは、Capital One Entertainmentと言う新会社を設立して、カード所有者にスポーツイベント、劇場やコンサートなどのチケットの取り扱いを開始したからだと思われる。それにしても、年間の2,500万ドルの契約金は驚くべき金額だ。

それ以上に驚いたのは、今までのMLBのビールカテゴリーのスポンサーのバドワイザーに加えてコロナビールがスポンサーに加わったことだ。通常スポーツのスポンサーシップでは、1業種1社が原則だ。この原則が当てはまらなかったのは、東京オリンピック・パラリンピックのケースだ。かなり多くのカテゴリーで1業種1社ではなく、2社か、それ以上になっていた。例えば航空ではJALとANAがどちらもスポンサーで共存した。スポンサーシップのビジネスにおいては、これは例外的なものと考えられる。そもそも、独占権を与えてスポンサーシップの価値を高めることがビジネスの基本だからだ。また、企業に対する調査でも、スポンサーシップを獲得する理由の1つは、競合会社を排除するためが、上位に上がっている。

だが今回、コロナビールが、バドワイザーに加わって、MLBのスポンサーになった。つまり、どちらも、カテゴリー非独占のステイタスを受け入れていると言うことだ。後から参入するコロナビールわかるが、バドワイザーは1980年からMLBのスポンサーになっている。どちらもの契約内容も公表されていないのでわからないが、コロナビールとの共存を認める代わりに、バドワイザーには金銭的、非金銭的なインセンティブが与えられたものと思われる。例えば今回バドワイザーは、缶入りのカクテルCutwater Spritsも非独占でMLBの権利が使えるようになった。

またもう一つの、かつ最大の理由の1つはバドワイザーの親会社のAB InBevはアメリカとメキシコ以外ではコロナビールの所有しているためと思われる。つまり米国内とメキシコでは競合していても世界では自社商品だからと言うことなのかもしれない。

ビールカテゴリーでの競合2社の共存となるため、スポンサーとしての称号はコロナビールの場合はMLBオフィシャル輸入ビールとなるようだ。

バドワイザーもコロナビールのどちらの契約も、MLBとの契約で、個々のチームの契約は別となっている。両者ともに、個々のチームとの契約は進めている。コロナビールもオフィシャル輸入ビールとして、シカゴ・ホワイトソックスと2017年から契約がある。また、コロナビールとバドワイザー以外の、多くのビール会社も個々のチームと契約している。それは、MLBの契約はレギュラーシーズンの試合についてはカバーされないため、スタジアムの広告やマーケティング権などについては、個々のチームと進めなければいけないからだ。そのために、レギュラーシーズンの試合の方が重視している企業が多いためと思われる。

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