JFA会長、ユニバーサル・アクセス権を望む

by Shogo

サッカー日本代表が、FIFAワールドカップへの出場を決めた先日のオーストラリア戦は、DAZNのみでの放送となり、地上波やBSでの無料放送はなかった。これを受けて、JFAの田嶋会長が、FIFAワールドカップやアジア予選など注目度の高い日本代表戦を無料で視聴できる法律の整備を国に求めると発言した。これは、イギリスのユニバーサル・アクセス権を念頭においた発言だ。

イギリスの放送法は以下のように定めている。・

政府は、国民的関心が高いスポーツイベントのリストを作成できる。これらのイベントの放送権を「公正かつ合理的な条件」で主要な地上波無料放送事業者に提供しなければならない。その目的は、すべてのテレビ視聴者がそのイベントを視聴できるようにすることである。

The Broadcasting Act, United Kingdom

このリストは、常時改定されて、対象になるスポーツイベントが変更され続ける。このリストは、クラウンジュエル・リストと呼ばれ、カテゴリーAとカテゴリーBの2種類ある。カテゴリーAに含まれるイベントは、地上波無料放送での生中継が必須で、カテゴリーBは録画・ハイライトでも許される。

カテゴリーAには、オリンピック、FIFAワールドカップ、EUROやラグビーワールドカップの決勝、ウインブルドン・テニス決勝などが含まれている。カテゴリーBは、録画・ハイライトでも許されるので、生中継は有料放送でも可能となる。

イギリスの法律では、FIFAワールドカップの予選は含まれていない。ただし、国民の関心が高いスポーツイベントを日本で定義すると、サッカーのFIFAワールドカップ・アジア最終予選、少なくとも、その中の日本代表戦は含まれることが望まれる。

イギリスなどでは、スポーツは「公共財」という考え方がされている。日本においてもスポーツ基本法によって、スポーツの国民生活への意味や意義が定義され、それに基づいて、スポーツやオリンピックのような国際イベントに税金が使われる根拠になっている。ここから、そのスポーツのユニバーサル・アクセス権が必要なことは自明である。その意味で、JFA会長の法整備を求める発言は正しい。

その際に、誰が無料放送事業者かも定義する必要があるだろう。イギリスにおいては、人口の95%が無料で視聴できる放送事業者を対象にし、その対象サービスは、こちらも常時見直される。技術の発展や、それに伴って国民の視聴習慣が変わるからだ。現行のイギリスの放送法では、単純にテレビ局だけを対象にしていない。家庭のメインとなるディスプレイが対象である。これには、地上波、BS、インターネット配信も繋がっているので、そのどれかかの方法で95%が満たされれば良い。現時点ではインターネットだけで95%が満たされることは難しいので、組み合わせか、通常の無料テレビ放送だけが対象になる。これは、日本で同様の法律が、今、整備されても同じだ。

また、この法律によって、対象となるイベントの放送権は、「公正かつ合理的な条件」で提供されなければいけないために、主催者にとっては、放送権収入の減少を意味する。大きな抵抗があることは事実であろう。だが、公共の利益のために、それを認めさせるという断固とした姿勢を法律によって示さなければいけない。

今回のオーストラリア戦がきっかけとなって、スポーツの公共財としての意味とユニバーサル・アクセス権が議論され、何らかの対応が取られることを望みたい。そうでなければ、スポーツが巨額の放送権によって成り立つということは長く続かず、結果的に国民の財産であるスポーツが失われるということになりかねない。

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