昔から「酒は百薬の長」と言われ、適度の飲酒は健康に良いとされてきた。しかし最近は、連続した飲酒が肝臓などの内蔵に与える害が知られ、多くの人が休肝日を設けていると言う。先日の山登りの会の後の居酒屋での酒宴の際にも、週に何回の休肝日が適切かと言う議論がなされた。ある人は1回が適切で、ある人は3回であるべきだと言うような議論だ。
休刊日の議論がなされたのは、肝臓や内臓に与える影響のためである。心臓病については、誰もあまり認識していなかったように思える。
休肝日の議論は別にして、適切な飲酒は心臓に良い影響を与えると長い間考えられてきた。しかしJAMA Network Openと言う雑誌に掲載された論文では、心臓病に関しても適切な飲酒量と言うのは無いと結論が出されている。
今までの研究では、適度の飲酒量の人は、大量に飲む人や禁酒している人に比べて心臓病が少ないとされてきた。しかし、これは飲酒が心臓を守ると言うことでは無いようだ。適度にお酒を飲む人には、お酒以外に心臓を健康に保つような生活習慣があることが多いからだと考えられるようになったと言う。週14杯程度までしか飲まないような軽い飲酒から中程度の飲酒までする人は、運動量が多く、喫煙量が少なく、体重が少ないなど、飲酒以外の要因で心臓病のリスクが軽減されていたと言うだけと言う。
JAMA Network Openに掲載された論文は、イギリスのバイオバンクと言う大規模な遺伝子と疾病の研究に参加している約40万人の遺伝子と医療データの分析を含んでいる。今回のアルコールの飲酒量と心臓病の関係について選ばれた被験者の平均年齢は57歳で1週間に平均約9.2杯のアルコールを摂取していると言う。
この研究では飲酒量が多いか少ないかを決定する遺伝子変異を発見している。そして、アルコール摂取量が多い遺伝子変異を持つ人が、摂取量の少ない遺伝子変異を持つ人に比べて、心臓病や高血圧が多いかどうかを調べた。
この研究の結果、飲酒をしない一般的な中年者が環状動脈性心疾患にかかる可能性は9%のようだ。しかし1日 1杯のアルコールを飲むとそのリスクは10.5%に上がり、その後飲む量が増えると指数関数的なカーブでリスクが上昇すると言う。つまり、全く飲まない人に比べて、少しだけ飲む人は。わずかだがリスクが上昇する。つまり、飲むより飲まない方が良いと言うことだ。それから、飲酒量が増えるにつれて急激にリスクが上昇するから、大量の飲酒は避けるべきと言うことになる。
今まで行われてきたような、観察研究では相関関係を見つけられても、因果関係を見つけることができない。飲酒量以外に、体重・喫煙・運動など多くの要因が関係するからだ。しかし今回のバイオバンクの研究では、飲酒量を決定する遺伝子によって、分類をしているので、飲酒量と心臓病の関係については因果関係を結論付けることができていると言う。
オーストラリアで行われた別の研究では、心房細動を持つ140人の患者を対象にして、心臓病と飲酒量の関係を調べている。この研究の参加者は平均17杯の酒を飲むと報告していた。この対象者を2つのグループに分けて、無作為に選ばれた70人のグループには禁酒をお願いして、結果として週に平均2杯まで飲む量を減らすことができた。飲酒量を減らしたグループでは、心房細動の発生が0.5%だったが、飲酒量を変更しなかったコントロールグループでは発生率は1.2%だった。この結果から、飲酒量を減らす事は心臓の健康に大きな影響があることがわかる
感覚的に、アルコールを飲むと脈拍が速くなり血行が良くなる感じがする。それが心臓に良い影響与えるものと思ってきたが、実際にはアルコールは心臓に害であっても、良い効果をもたらす事はないと言う事のようだ。ましてや肝臓などへの影響は明白だ。先日の山の会でもお酒を控えていたが、これはどうも続けたほうがよさそうだ。