プライバシー意識の高まりとともに、インターネットにおけるユーザー追跡技術については反対の声が多い。このためにすでに、AppleはそのブラウザのSafariでサイトをまたぐ第三者クッキーを排除している。またiPhoneでも個人情報の共有についてはユーザー本人の同意を必要とするように仕様を改めた。
インターネットでユーザーの行動を追跡している、もう一方のインターネットの巨人のGoogleも2023年半ばには第三者クッキーの廃止を決めている。ただしAppleと違ってGoogleは広告ビジネスで成り立っている会社のため、第三者クッキーに代る有効な広告ターゲットの認識の方法を必要としている。
そして、クッキーを使わないで広告ターゲットを絞る方法として2022年1月にTopics APIを発表していた。そして、その具体的なテストを開始すると3月30日に発表した。参加している企業名は発表されなかったが、このテストによって、ウェブ運営会社や広告テクノロジー会社が、効果的にターゲットを絞れるかテストを行うと言うことだ。
このテストは、ブラウザのChromeを使って行われる。このテストに参加を望まなければ、Chromeの設定からオプトアウトできるようだ。ヨーロッパにおいては、GDPR(EU一般データ保護規則)の影響だと思うが、このテストに参加するためにはオプトインをしなければいけない。これを現実的に考えれば、ヨーロッパではテストは実行されないに等しいと言う事だろう。
このTopicsでは、Chromeの履歴から、消費者の興味・関心を推定して対象者をグループに分ける。Topicsが1月に発表された際には、この興味・関心は300程度とされていたが、今回の発表では数千の興味・関心をが提供されると発表された。このそれぞれのグループが広告のターゲットと言うことになる。数千もあるので、単純に車に興味があると言うよりも、どのような種類の車に興味があるのかまで細かく定義されるものと思われる。
この興味・関心で分けられたグループの詳細は、グループとしての取り扱われため、特定の個人の履歴は、広告主、ウェブ運営会社、広告テクノロジー会社には共有されないため、個人情報が共有される事は無い。ここがGoogleによる個人のプライバシーを守りつつ、効果的な広告のターゲティングが行えると言う落としどころなのだろう。
ただし今までのクッキーによる個人の特定よりも、はるかにターゲティングの精度が落ちる。今は、ある特定の自動車会社のサイトを訪問した人に、広告を出すことができるが、そのような事はできなくなる。つまりある特定の自動車会社のサイトを訪問した際には、車に興味のあるグループとして取り扱われると言うことだ。しかも、その数は、特定の個人ではなく、数千、数万人、あるいはそれ以上と言う単位になる可能性がある。
2022年から23年にかけてこのようなテストが行われて、2023年半ばと言われている第三者クッキーの完全な廃止までに、広告主が納得できるようなシステムに仕上げていくものと思われる。ただし先ほど書いたように、ターゲティングの精度が落ちるために、広告の効率が落ちて広告主から不満の声が出るのは間違いない。これは、Googleも広告主も広告収入を得るサイト運営社も払わなければいけない対価だ。問題は、それによってコンテンツの質や量が落ちて、インターネットそのものの価値に影響が出ないかということだ。