Amazonが、ファッション販売の実店舗、Amazon Styleをオープンした。場所はロサンゼルス近郊のグレンデール。ファッション販売の実店舗としては初めてである。
事前に自分のサイズなどをアプリに登録しておき、ディスプレイされている商品のバーコードを読み取ると、試着用に、そのサイズの商品を店員が試着室に持ってくるようだ。また、買い物を続けるうちに、アプリは顧客の好みを蓄積してお勧めもしてくれるようになる。Amazon Styleの主な取り扱い商品はラコステ、リーバイスなどで高級ブランドは取り扱わないようだ。
このAmazon Styleの今後の店舗展開は現時点では何も発表されていない。Amazonは3月に、アメリカとイギリスで68の実店舗を閉鎖した。閉鎖したのはAmazon Booksの書店、Amazonで人気のある商品を購入できる4 Star Storeだ。この際にAmazonは、今後の実店舗については、食品を取り扱うAmazon FreshやファッションのAmazon Styleに注力すると発表していた。
現時点でのAmazonの実店舗展開は3種類である。コンビニエンスストアのAmazon Goこれは現時点ではシアトル、シカゴ、サンフランシスコ、ニューヨークの4店舗。レジを通らずに買い物できることで有名だ。コンビニエンスストアのチェーンと言うにはあまりにも数が少なく、現時点ではまだまだ実験的と言うことだろう。
食料品を取り扱うAmazon Freshは、現時点では全米に30店舗展開している。これは2017年に137億ドルで買収したWhole Foodsの仕入れや物流のネットワークが生かせるのであろう。
Whole Foodsは、買収後もAmazonブランドではなく、もともとのWhole Foodsで営業中で、現在アメリカ・イギリス・カナダに500店舗近い店を展開中の巨大なスーパーマーケットチェーンである。この会社が背後にいるので、Amazon Freshは効率的に展開できるのであると思われる。ただし、AmazonブランドではないもののAmazonの子会社であるために、食品分野でAmazon Freshを展開するAmazonの戦略的意義についてはよく理解できない。
そして今回のAmazon Styleである。現時点ではまだ1店舗。今後の展開については不明である。これについても、高級品でない、日常着を販売する実店舗については、その意味がよく理解できない。オンライン販売で充分ではないかと思う。Amazon のオンラインストアでは、マーケット・プレイスで、ファッションの偽物が販売されていることが問題になっている。今後、自社がさらに本格的にファッション販売を行っていく上で、販売についてのノーハウの蓄積といったような実験的な意味があるのかもしれない。
Amazon は、最新の売上げで4698億ドルもの会社である。実験しようと思えば何でもする余裕はあるし、失敗もできる。今回のAmazon Styleについても、AmazonGoがレジを通らない画期的なシステム、Just Walk Outの実験を行なっていることと同様に、ファッション販売のノウハウや消費者の好みのデータ収集というような目的なのかもしれない。実店舗のコストを考えると今後店舗が拡大する事は無いのではないかと考える。