ついに懸案のフェルメールの「音楽の練習」を見に行った。午後早くに時間が空いている 日があったのでランチの時間をつぶして行ったのだ。バッキンガム宮殿にある「音楽の練習」は、女王の夏休み期間しか一般公開されないから、そのタイミングでロンドンにいるのは難しい。
こういう時はバッキンガム宮殿にオフィスが近いのはうれしい。歩いて10分ほどの距離だ。バッキンガム宮殿は時間をかければいくらでも見るものがあるのだろうが、すべて素通りしてフェルメールにまっしぐら。フェルメールを時間をかけてみた後は余裕を持って同じ絵画ギャラリーにあるレンブラントとかカラバッジュを見ても午後の約束の時間まで余裕で戻れた。
実物のフェルメールとしては最後の絵になったし、好きな中期の作品で早くから見たかったものの、ロープで1.5mほども隔てられているし、他の絵にはないガラスが額にはまっているわであまり良い環境ではなかったのが残念だ。それでも長い時間独り占めにして見ていられたのでよしとしよう。「音楽の練習」はギャラリーの端に架けてあって警備のおじさんがそばに立っていたのだが、長い時間見ていたから目で話しかけられた。その顔は笑っていたが言葉は発しなかった。規則でしゃべってはいけないのかもしれない。
絵そのものはよく知っているので驚きはないのだが、ちょっと距離があってこの時代のフェルメールらしい筆致をよく見られなかったのは残念だ。前に単眼鏡を買おうとして結局買わなかったことが悔やまれる。元々、他の絵に比べて人物が遠くに居て絵に入りづらいことは事実なのだが、この絵の色味と壁の鏡にイーデルの脚を描いて画家自身の痕跡を残している点が好きだ。似た絵では、ボストンのイザベラ・スチューアート・ガードナー美術館から盗まれてもう永遠に見られないかのしれない「合奏」にくらべてややコントラストが高く、明るくて光の感じがとてもフェルメールだなとも思う。
これで現存すると考えられているフェルメールの絵はすべて(盗難中の「合奏」をのぞいて)実物を見た事になるから、あとはまだ行っていないエジンバラとブラウンシュバイクまで行ってみるかだが、それはまだ急がなくても良いような気がしている。最初にニューヨークで見てから20数年経ってついに実作をすべて見る事ができた。何となく過ぎた時間だけのことを考えて裏口から宮殿の裏庭にでた。
写真は、バッキンガム宮殿の裏庭。